5時に起床した。静かな朝である。手袋をした手でカメラを抱きかかえ、まだ夜明け前の屋上に出た。霧で白く煙る中に黒い人影が一つだけあった。「お早うございます!」動いたシルエットを見て、A氏であることがすぐに分かった。初めてここを訪ねた氏の期待は、僕より遥かに大きいものであったのだろう。折角の新しい一眼レフカメラなのに、エベレストの姿が見えないのではシャッターを切ることも出来ない。「仕方がないねぇ・・・」彼は苦笑いをしながら、両手に抱えていたカメラを霧の中の僕に向けて構えると、「カシャリ!」。せめてもの1枚である。記念の撮影をしてくれた。
霧に包まれた太陽 |
次第に明るくなった頃、2人、3人と同行の仲間がやって来たが、皆無念な気持ちを抑えきれない様子。6時25分、朝日が顔を出す時刻である。少し風が出て来た。若しかしたら、霧が流され一瞬の後にヒマラヤのモルゲンロートを見ることが出来るかもしれない・・・奇跡を期待して粘ってみたが、空しく時間だけが流れて行った。
部屋に帰って荷物の整理を済ませる。7時になっても霧は晴れず、高く昇った朝日だけがぼんやりと見えていた(写真左)。空気が澄んでいたら、この太陽の下には、赤く染まったヒマラヤが横一列に並んで見えているはずなのである。今回も期待は裏切られた。残念無念である。
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