マルグレテーン行きの列車は、やや遅れて到着した。十数分乗るだけだが、途中で国境(オーストリアからスイスへ)を越える。拳銃を腰に下げた制服の役人二人が乗り込み、パスポートチェックをしていたが、僕らには何も要求しなかった。日本人とみて信用してくれたのであろう。
マルグレテーン駅で再度乗り換える。今度は、ザンクトガレン行きである。駅前広場では、土曜の市が開かれていた。大きなカウベルが眼に入って、スイスに来たことを実感する。しかし、のんびり眺めている余裕はなかった。スイスの列車は時間に正確だ。待ち合わせ時間は11分。移動に4・5分はかかる。列車の待つホームへ急いだ。
待っていてくれた運転手 |
ザンクトガレン駅には、15時07分発アッペンツェル鉄道の列車がすでにスタンバイしていた。アッペンツェルまでの所要時間は44分。トイレをすませておく必要がある。運転手に尋ねると、この列車にはトイレが無い、と言う。時計を見たら、発車まで3分。
「待っていてくれる?」 「OK」 荷物だけ列車に乗せて、運転手の指差す方へ二人で走った。運転手は待っていてくれた(写真左)。乗車する僕らを見て手を振り発車した。
アッペンツェルを訪ねるのは、これで3度目(家内は4度目)。赤い列車が懐かしい。運転手の優しさも心に沁みて嬉しく思う。アッペンツェルは、心安らぐ街、格別に親しみを感じる街なのである。
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