2007アルプスへの旅

◆14日目(8月27日)晴れ

目次へ
前の日
次の日へ
次の日

◆ドラマチックな夜明け


サッソルンゴの朝が始まった

 6時少し前、二人でホテルを出た。途中でサッソルンゴが、薄く色づき始めた(写真上)。北の空には優しく薄い雲が広がりピンクに染まる、其の下に連なる山々も草原の小さな池にもピンクが映えて美しい(写真下)。

遠くまで見えた清々しい朝景色

 清々しい朝を迎えた。ふと後を振り返ってみたら、山の上に激しく燃えたつ雲があった(写真下)。思わず息を飲む。15分で峠に到着した。

東の空が燃えたつ雲で赤く染まった

 山々はようやく目覚め始めた。サッソルンゴに朝日が当り、徐々に上から下へと赤く染め上げていく。壮大な夜明けの開幕である(写真下)。

朝日を受けて輝きを増すサッソルンゴ

急に輝きを無くしたサッソルンゴ

 高まる興奮は、長くは続かなかった。東の空に湧き出た雲が、朝日を隠してしまったからである。見る間にサッソルンゴは色あせ、青ざめてしまった(写真左)。時々、マーモットの鳴き声が流れた。マルモラーダにも薄日が射したが、もやった感じですっきりしない。しばらく待ったが、雲は厚みを増すばかりで動こうとしなかった。諦めて、帰路につく。


別人のように見えるサッソルンゴ

 8時少し前、ホテルに帰着。ベランダに出てみたら、サッソルンゴが明るく輝き始めているではないか(写真右)。ウヌウヌ! 今度は一人で車を飛ばした。しかし峠に着く頃には、もうサッソルンゴに輝く光は残っていなかった。悔しいが、移り気な雲に振り回されてしまったようだ。

◆オルティセイに向う


Plan De Gralba

 9時過ぎから朝食。10時、チェックアウト(写真左)。Selva へ向って坂道を下る。Selvaは、谷あいの村だということがよく分かる。次に、St.Christina を通過。12年前、この街のカメラ店でお世話になったことがあったね・・・しかし、その店を見つけることは出来なかった。車は、直ぐにオルティセイの街に入った。


ロープウエイに行く坂道からの街景色

 今日は、この街に泊る。この街から伸びるロープウエイに乗り、「ドロミテの展望台」と言われているアルペ・ディ・シウジへ行ってみようと思う。其処は、周囲を深い谷で切り取られた丘陵地帯で、王冠のようにドロミテの山々が取り囲むヨーロッパ最大の放牧地でもある。取り囲む山の一つがサッソルンゴ。もう一度眺めて見たいと思う。

 街の中心に車を乗り入れたが、規制が厳しく駐車する場所を見付けるのに苦労した。商店街は大勢の観光客で賑わっていた。観光案内所でホテルを紹介してもらい、アルペ・ディ・シウジの案内、資料も入手。ロープウエイに近いホテルSureghes (3★) にチェックインを済ませた(写真右)。

◆アルペ・ディ・シウジへ


ロープウエイ駅

 ホテルの駐車場に車を預け、スケッチ用具とカメラを担ぎロープウエイ乗り場に急いだ。赤いゴンドラは,高度差ほぼ1000mを一気に登る(写真左、下)。かなり急な勾配を登るので高所恐怖症の家内は緊張、辛いものがあったようだ。それにしてもこんなに長い距離を,支柱なしのロープ1本で登るのだから、考えてみれば恐ろしい。


ゴンドラからの眺め
 ゴンドラを下りて外に出たら、正面にサッソルンゴの姿があった(写真下)。しかし、その方面はガスに包まれて視界がはっきりしない。晴れたり曇ったりの空を見上げて思う。そのうちに雲が切れてすっきり見えるようになるかもしれない・・・木陰のベンチに腰を据え、そうなることを期待して写生を始めた。

すっきりは見えなかったサッソルンゴ

 1時過ぎ、昼食に用意しておいたサンドイッチを、ホテルに置き忘れてきたことに気づく。周囲を見回してみたが、レストランも売店もなし。仕方がない。持ち合わせのバナナ1本とリンゴジュースが本日のランチである。

赤い花が眼に沁みる若者の慰霊碑

 ベンチの後の木立の中に、多分ここで遭難したらしい若者の慰霊塔があった(写真右)。名前の横に 21・5・1966 24・3・1985 と刻まれていた。19才の青春。どんな情況で花と散ったのかは分からないが、本人も家族もさぞ無念なことであったろう。慰霊塔は20年余の風雪に耐えてきたことを物語っていたが、供えられている赤い花を見て、今もなお家族に愛されていることが偲ばれた。合掌。

 天候は、期待に反して一向に良くならない。それでも、一応の描き込みは出来たので筆を置く。まだ、たっぷり時間はある。体も冷えてきたので、少しは山歩きもしてみようか、と話し合う。ホテル案内の看板を見付けた。そこのレストランで食事が出来るかもしれないな。コースタイムを確かめると、ここから徒歩10分とある。とりあえず、そのホテルを目標に歩き始めた。

 緩やかな坂道を、だらだらと下る。途中、観光用の遊覧馬車と2度すれ違った(写真下)。中年カップルとファミリーが楽しそうに談笑していたが、年配の馭者は馬と一緒に歩いていた。どんなに馬の負担が重いものか、よく分かるからだろう。遠くに見えるサッソルンゴは、ますますかげが薄くなっていく。20分位歩いた地点で、ようやくホテルゾンネの姿が現れた。空腹を抱えての歩き、道程が長く感じられていたがヤレヤレである。

山域内での交通機関でもある遊覧馬車

 ホテルの近くで大きなリャマ数頭が草を食んでいた(写真下)。思いがけない出会いだったので、少し驚いた。南米に住む動物が、どうして?ウエイターの答えはひとこと"hobby"だった。
 ホテルでの食事を期待していたのだが、レストランは休み。飲み物とサンドイッチだけならば、と言う。コーヒーと一緒にオーダー。野外のテーブルで空腹を満たしていたら、ポツリ・ポツリ・・・小粒の雨が降り出した。

数頭のリャマが草を食んでいた

ゾンネスポーツホテルへの坂道を下る。正面に見えるのがサッソルンゴ。

 生憎、雨具はないし、20分余りかけて下って来た坂道を、再度引き返す気力もない。幸いなことに、ホテル横からゴンドラ駅を結ぶ二人乗りリフトが動いていた。降り出した雨の所為で、利用する客が列を作っていた。係のおじさんは、一人で出札、整理、介助と大活躍である。"イチニのサン"と掛け声をかけて、リフトに乗せてくれた。

◆イタリア最後の買物

 一旦ホテルに戻り、イタリアでの最後のショッピングに出掛けた。商店街は、国道を渡った向い側の丘の上。ホテルからは陸橋を渡って行くのが近道であった(写真下)。

ホテルSureghes

9月2日にマラソン大会があるらしい

陸橋を渡って町の中心へ買物に出掛けた

 橋を渡りきると、其処が街の中心。石畳の坂道が続く街並みには、奇麗な建物が多かった(写真下) 。

ホテルの壁面に描かれている歴史画が面白い。文字が読めると、もっと面白いのだが・・・


店内の飾り棚には無数の木彫人形が並べられていた。
いずれも手彫りによる高レベルの出来栄え。高値の価格表示に頷く。

店の入り口に置かれた彫り師の木彫像

 この街の自慢が木彫というだけあって、その作品を並べる店が幾つもあった(写真上、右)。その中の老舗と思われる店で、ユニークなワイン瓶用のコルク栓を1個だけ買った。

 明日は、いよいよインスブルック。荷物の整理をしておく。


ライン


ホームへもどる
HOME
目次へ
前の日
次のページへ
次の日