2007アルプスへの旅

◆13日目(8月26日)晴れ

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◆体調不良、救急病院へ

 6時。晴天である。昨日、尾根で見たサッソ・ルンゴは逆光の中だったが、午前の光線ならば、まるで別の顔を見せるに違いない。朝日に輝く姿を見てみたい。尾根まで行ってみようと思った。体調に不安を感じたが、たどり着きさえすれば帰路は何とかなるであろう。このチャンスを逃したくないと思った。玄関を出ようとしたがカギがかけられており、ドアを開けてくれるよう頼みたくても人の気配なし。行ってはならぬということか? 諦める。

 8時、朝食を前にして、気分が悪くなった。1昨日と同じように倦怠感に襲われる。浅田アメを口に入れ、横になった。20分後、無理して食堂に行き、とにかくエネルギー源を補給しておく。パンと果物、ヨーグルト。部屋に戻って、又横になる。少し眠ってしまったらしいが、体のだるさが払拭出来ない。昔、急性腎炎になり、旅先でハンドルを握れなくなったことを思い出した。その時程ではないにしても、何だか不安の雲が広がり始めると、マイナス思考が強まり自信がぐらついてくる。


おじさんが描いてくれた地図

 心配になった家内は、ホテルのおじさんに相談した。おじさんは真剣に心配してくれ、街に住む兄弟にも頼んで日曜でも開いている病院を探してくれた。USLという日曜も診療している病院が此処から凡そ25kmの Pozzaという街にあることが分かった。"往診を頼むかどうか決めてくれ"というが、ここでは検査はできないので"自分で出向く"と答える。おじさんは、分かり易いように工夫した地図を書いてくれた(写真左)。この地図は、一度書いた地図を見直し、ドライバーの視点からより分かり易いように新しく書き直してくれたものだという。その思い遣りと優しさに胸が熱くなる。10時半、心配してくれたおじさんに心からお礼を言ってホテルを後にした。旅先での親切、殊更に心に沁みてありがたい。

 中年男性のドクターと年配の男性看護師が居て、直ぐに診てくれた。日本から持参のドクターKの診断書を提示。血圧、血糖値を測定し、毎日の食事の摂り過ぎが原因だろうと診断。「高度の影響も考えられるから、標高1000m以上は避けるように。」更に「アルコール、ジュース、ケーキは厳禁です。それだけでOK。」と、ドクターは笑顔で言った。
 何だ、そういうことだったのか! 要するに、食生活の変化と旅の疲れが重なったということだろう。心配しすぎてしまったようだ。安堵はしたが、つくづく体力の無くなっていることを痛感する。頑張りは、ほどほどにしなくては! と思う。

◆カレッツア湖


カレッツア湖

 「Pozza まで来たのだから、カレッツア湖まで行ってみようよ。」安心した家内が明るい表情で言う。ガソリンを補給して、スタート。カーブの多い山岳道路を慎重に走りぬけ、辿りついた湖は期待したほどのものではなかった。確かにエメラルド色の湖の色は美しかったが、絵に描いてみたい!と思う景観ではなかった(写真右)。時間的にも午後の光線は具合がよくなかった。陽射しがきついので、日陰のベンチでしばし休憩。記念の撮影を済ませて、すぐに来た道を引き返した(1時半)。

◆コスタルンガ峠


コスタルンガ峠

斜面一面に咲いていた花

 2時半、コスタルンガ峠(1758m)で一息入れた。峠には歴史を感じさせる趣きのある家々が肩を寄せ合っていた(写真上)。其の前のなだらかな丘の斜面には、沢山のピンクの可愛い花が咲いていた(写真左)。冬期には家族連れのスキー客で賑わうゲレンデになるのだろうな・・・、花を踏みつけないよう注意し乍ら散策した。穏やかな昼下がり、花の絨毯の上に青いシートを拡げて、一組の中年カップルが日光浴を楽しんでいた。幸せそうな二人を見下ろすように、丘の上には壮大なお城のように横たわっている山があった。Catinaccio(3004m)(写真下)。ドロミテを代表する山の一つである。


Catinaccio

◆セッラ峠とサンソルンゴ

 カナツェイを過ぎると、九十九折りのヘヤピンカーブが始まった。左右に巨大なセッラ山群の威圧感が凄い(写真下)。

セッラ山群

セッラ山群
 登りつめると、サンソルンゴが大きく迫ってきた。サンソルンゴの右手の麓がSella峠。峠に建つホテルが小さく見えた(写真下)。

サッソルンゴ

サッソルンゴ
路肩に車を停めて、しばし休憩。山の空気は美味いなぁ・・・、と思い乍ら、ぐるりと展望を楽しむ。登って来た道を振り返ってみたら、マルモラーダの姿もあった(写真下)。

マルモラーダ
 Sella峠(2237m)は、狭い敷地に車やモーターバイクが溢れていた。やっと隙間を見つけて駐車。眼前に堂々と聳えるサンソルンゴに眺め入る。何度見てもいい山である。見ていると、心が落ち着いて来る。そんな山である。

◆何処に泊ろうか

 今夜の宿を何処にするか、決めかねていた。この峠に建つマリアフローラホテルは、フルリーナさんの「DOLOMITIへの扉」に紹介されていた。山並みを見渡すのには絶好の位置にある。心が動いたが、同じくもう1カ所、ガルデナ峠の景観にも関心があった。
 とにかく行ってみよう。少し下ったところの分岐点を東に進むと、間もなくガルデナ峠(写真下)。ギザギザ山が連なる景観を眼の前にして、「以前一度来たことがある」、と家内が言う。しかし、はっきりとは思い出せなかった。つまり、その時の印象が薄かったということであろう。今回も、この地に泊ることはパスすることにした。

ガルデナ峠

 さて、どうするか。話し合った結果、Selva で宿を探すことにした。28日正午にはインスブルックに行かねばならない、そのことを心配する家内の心情を汲むことにしたのである。分岐点を通過したとき、<夜明けのサッソルンゴ、見てみたいなぁ!>と思った。
 分岐点から少し下った所に、Piz Sella というスキー用リフト駅があり、その近くにホテルが2軒あった。其の前を通り過ぎたとき、<ここからならセッラ峠まで戻るのは容易な距離だ>、と思う。ブレーキを踏み停車。びっくりした家内が「どうしたの?」と聞く。「やはり、もう一度、早朝のセッラ峠に立ってみたいんだ。」了解してくれたのでUターン。通りに面して建っていたPlan De Gralba(3★)にチェックインした。なんともはや衝動的な決め方である。

 案内された部屋のベランダに出てみたら、正面にサッソルンゴ、左手にセッラ山塊を望むことが出来た(写真下)。しかし、いずれもごく平凡な眺望。

ホテルベランダからの眺め

 7時半〜、ディナー。医者の忠告に従い、アルコールなしの控え目料理(写真下)。二人共にナチュラルウオーター。

今夜の料理
 明朝、早く外出したい旨オカミに伝え、玄関ドアの件を確認。明日の天候は、予報は晴れ。予報が外れないことを祈る。

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