水(Wasser)を入れる大きなタンク |
バスは、ほぼ満員の乗客を乗せて定刻にスタートした。高い山に囲まれた街は、まだ朝靄に包まれており人影もまばら。バスは細い山道を峠に向ってぐんぐん登った。対向車が来たらすれ違えそうもないな・・・と、心配していたが、1台の車も現れなかった。しかし、もうすぐ峠というあたりで、狭い道一杯に作業中の車がいて進めなくなった。作業が終わるのを待つしかない。全員、静かに作業を見守った。
グローセ・シャイデック峠は、爽やかな朝の空気に包まれていた。
峠に在る牛舎から、カウベルを鳴らし乍らゆっくり出て来た牛たちは、朝日に照らされ始めた草原に向って歩き、美味しそうに草を食む。峠のはるか向こうにも日が射しはじめ、遠く近く、のどかに響くカウベルの音に合わせて峠の朝は限りなく平和である。急いで、スケッチブックを広げた。
峠で出逢った日本人夫妻と挨拶を交わした。スイスが好きで何度も訪れているとのことであった。我々と同年輩であり、いかにもマイペースで仲良く自然を楽しまれている姿を美しいと思った。写真を撮らせてもらい、名刺交換。個展を見に来て下さるとのこと、楽しみである。
道の向こうにグリンデルワルド |
登って来た道を振り返ると、アイガーが鋭角的な姿で聳えていた。街から見上げる山と、とても同じ山とは思えない。眺める角度を変えると、こうも違った山になるものか。アイガーの新しい魅力を感じながら、再度腰を据えて写生にとりかかった。
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