添乗員の顔を立てるために、「イギリス屋」までバスで行きちょっぴり買い物。そこから地下鉄を利用して、再度「チャリングクロス」に行き下車。地上に出て、トラファルガー広場を横切る。広場に面してナショナル・ギャラリーの威容が目に飛び込んできた。英国が世界に誇る美術館である。
最初は個人のコレクション38点を議会が買い上げ、初の国立美術館として発足したのが1824年。その後、積極的に充実化が進められ、協力者も増え、現在の2000点を越える規模にまで発展してきたものらしい。
内容は自国の美術よりヨーロッパ本土の美術が中心になっていた。今日迄の美術館の歩みを調べてみると、博物館とは基本的に性格を異にしていることが分かったし、市民が力を合わせて守り育てて来たことも理解出来た。正真正銘、英国の文化遺産であり財産だと言えそうだ。当初から無料で公開を続けているのは、そんな誇りがあるからであろう。心から敬服し、素晴らしいことだと思う。しかし、これだけの膨大な施設・財産を維持・管理するためには、それ相当の経費が必要であることも分かる。入り口に募金箱が置いてあり、カンパの要請が書かれてあった。子供にお金を投じさせる親の姿が多く見受けられ、これ又敬服させられる素晴らしい情景であった。僕らも、感謝の気持ちで手持ちのコインをカンパした。
絵画作品の展示壁面に限ってみれば、フランスのオルセー美術館より少し広い位であろうか。到底、全部の部屋を見て回ることは出来ない。一応印象派を中心に絞って鑑賞したが、時間の制約もあり、体力の限界も感じて楽しみを次回に残すことにした。
外国の美術館ではよく見かけることだが、此処にも名作と対峙して一心に模写をしている若い女性画学生の姿があった。その出来映えはなかなかのものであり、実物の名作より彼女の作品のほうが多くの鑑賞者の注目を集めていた。こうした若い人がいて初めて伝統が受け継がれて行く。将来がとても楽しみな学生だと思われ、その姿が何故か眩しく感じられてならなかった。もはや望んでも叶わぬ世界を、目の前に見たからであろうか。せめて、時間が許してくれるなら、もっとゆっくり鑑賞したいものだと思った。
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