はじめて耳にする言葉であったが、目で見て納得。それは、慣れ親しんできた日本の庭園と基本的には同じであり、その庭園を散策することで、英国を身近に感じることが出来たように思う。
これは、18世紀イギリスで指向された『自然回帰』の運動の中で創り出されたものである。詩人ワーズワースもその提唱者の一人であったが、自然への憧憬を色濃くし、共存を目指して作り上げられてきたのが英国式庭園である。それらを代表する最も美しい庭園といわれているのが、これから訪ねる「スタウアヘッド庭園」である。
最初に、その庭園の大きさに驚かされた。少しも構えた感じのしない入り口を進むと、大木に覆われ空が見えない程の木立の中を、緩やかに下る坂道が曲がりくねって続いていた。そして、突然開けた眼前には大きな池があり、水辺には大きなシャクナゲが咲いていて、その向こう岸に建つギリシャ神殿を思わせる白い建物が目に飛び込んで来た。正に、理想的景観を目指したスケールの大きい庭園であった。
スタウアヘッド庭園 |
小さな水鳥が遊ぶ中を白鳥が静かに割って進み、水面を優しく切り裂いていく。遠くに小さく子供のはしゃぐ声がした。近くの芝生に幼い赤子の兄弟が遊び、見れば乳児車の横には昼寝をしている母親の姿があった。すぐそばをあひるがお尻を振り振り通り過ぎていった。何と言う平和な情景であろう。
平和な情景 |
初日に出逢ったシャクナゲの花は、道中、いろいろな所に咲いていたが、丹誠されたこの庭に咲くシャクナゲは、正に絢爛豪華。圧倒的な美しさに魅了された。メンバーの中に植物に詳しい先生がおられて、珍しい花の木があるのを教えてくださった。「ハンカチの木」と言う。大変珍しい木で、見上げると本当にハンカチのような白い花が風に揺れていた。木そのものも珍しいが、花が咲くのに15年位かかるから、なかなか見ることは出来ないのだそうだ。
絢爛豪華なシャクナゲ |
「ハンカチの木」 |
木陰の下に陣取った老婦人が、小さなスケッチブックを膝に置き、片手で眼鏡を支え乍らどの部分を切り取って絵にしようかと思案中。すぐ近くには、連れ合いらしい整った身なりの老人が同じ携帯用の椅子に腰掛け、同じ小さなスケッチブックを開いて、静かに色つけを始めていた。平和な眺めである。心和むロマンティックな景観である。此処には、そんな穏やかな時間がゆっくりゆっくり流れていた。
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