この街そのものは、さして魅力的ではなかった。この街はずれにあるマナーハウス訪問が、今日の大きな目玉であった。
昔、貴族が住んでいた館を改装した超豪華ホテルとしても有名だそうだ。案内された部屋も超豪華。座り心地の良い肘付きソファーに身を沈めると、もうそれだけで超寛ぎ気分である。ぼんやりリラックス気分に浸っていたら、ティーとスコーンとサンドイッチが運ばれてきた。初めて体験する本格的なアフタヌーンティーである。
スコーンのさくさく感は格別であった。それに添えられた話題のクロテッドクリームをスプーンに取ってみた。意外な硬さ、しかし柔らかい粘り。その風味は、今迄味わったことのない美味しさであった。それは、濃厚でありながらさっぱりとしていた。「世界広しと言えども、此処でないと味わえない逸品です」と添乗員。頷き、素直に聞いておく。
上品な香りと味の紅茶を楽しみながら、改めて周囲を見渡した。
白いカーテンの揺れる窓の外には、サッカー場を思わせる広々としたグリーンがあり、クリケットに興じる若者たちの姿が小さく望めた。穏やかで静かな空間である。以前此処に住んでいた貴族たちは、毎日美しい衣装に身を飾り、平和で穏やかなアフタヌーンティーを楽しんでいたのだろう。さすが紅茶の国と言われるだけのことはある。その心をも豊かにする味わいの深さは、正に素晴らしい英国文化そのものと言えようか。
「では、そろそろ・・・」と声を掛けられて、我に帰った。画像に記録しておくことなど、すっかり忘れていたことに気がついた。少なからず、感動していたということであろう。
6時半、満ち足りた気分でホテルに帰る。駐車場には、赤いバラが午後の日差し照らされて、より赤く輝いて咲いていた。今夜のディナーは、8時ということになった。
赤いバラの花 |
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