★ 2001 パリ美術館訪問の旅
 ◆ 3日目(12月15日) 快晴 目次へ
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【本日の旅程】=ノートルダム寺院・サントシャペル・コンシェルジュリー観光、オルセー美術館見学

 7時起床。9時までに朝食を済ませて、10時、ホテルを出発した。
今朝も寒いが、今日はスケッチをするつもりである。寒さに弱い僕としては、その対策の為に身体の前と後に使い捨てカイロを貼ってきた。多分これで大丈夫だろうと思う。家内は、このスキッとした寒さはむしろ小気味よいものだと言う。ガイドとして僕が頼りにしている彼女である。寒さに強いタイプであることは幸いなることかな。
 今日は、昨日バスの窓から眺めたノートルダム寺院の近くを訪ねてみようと思った。22年振りに眺めたその佇まいが懐かしく思われ、その印象も強かったからである。


◆ パリの地下鉄
 地下鉄の路線図で調べて、昨日と同じ「シャルル・ミッシェル駅」からノートルダム寺院に一番近いと思われる「ポン・マリ駅」まで行く。途中、3度の乗換えを必要としたが、全部で14路線ある地下鉄は、数字を追って行けば容易に目的の場所へ行きつけることを確認、彼女は地下鉄利用に自信を持つことが出来たと言う。要するに、出発地と目的地を確認し、その両点を結ぶ路線の「路線番号とその路線の終着駅名」を覚えておけば、後はその番号を追って行きさえすれば目的地に到着出来る訳である。僕としても、更なる安心感をもつことが出来た。
 改めてパリの地下鉄の路線図を眺めて見ると、まるで蜘蛛の巣がパリの街全体を被っているように見える。100年の歴史を持つその線路の総延長は、現在200キロにも及び、1日の運転距離数は地球を何周もする長さになると言う。そして山手線の内側に収まると言われるさして広くはないパリ市内に、現在300以上の地下鉄駅を数えることが出来るのである。正にパリ市民の足としてなくてはならぬものであり、パリという都市を生かしている血管ともいうべき存在である。ちなみに、運賃は市内ならば何処まで乗っても均一(回数券で1回120円弱)である。単純なことはいいことだ。それにしても、よくもまぁ、こんなにたくさんの地下道を掘ったものだと、心底感心してしまう。モグラの怪獣モゲラも呆れてしまうことであろう。


◆ ノ−トルダム寺院
 地下鉄から地上に出たとたん、忘れていた寒さに身が引き締まる。トゥールネル橋から、シテ島に建つノートルダム寺院を眺めた。ちなみに、このシテ島がパリ発祥の地である。紀元前から人が住み、3世紀頃からローマの支配する所となりパリと呼ばれることになったらしいが、それだけに歴史的にも重要な地域となっている。そのシテ島の主役が、ノートルダム大聖堂である。

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トゥールネル橋から眺めるノートルダム寺院
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スケッチ作品

 此所からは寺院を裏手から眺めることになるが、ゴシック建築の最高技術を駆使したその建物は、重い屋根を含めてたくさんのアーチ状柱に支えられていることが分かる【写真上】。完成までに200年かかったといわれているが、それからほぼ800年、幾多の苛酷な試練にも耐え、今なお荘厳な姿をセーヌ河畔に保っているのは驚きである。
 正面はいわゆる寺院の顔であり、それなりの威厳に満ちた容姿を見せているが【写真右】、セーヌ川の向こうにその横顔を見せるノートルダムの姿を、僕は一番美しいと思う【スケッチ】。橋を挟んで両サイドからスケッチをさせてもらった。寒さの為に、指先が痛くなってしまった。
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ノートルダム寺院正面
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正面のばら窓内側
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堂内のステンドグラス

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堂内のクリスマス飾り
◆ 聖堂のステンドグラス
 家内と落ち合う為もあり、寺院の内部に入った。堂内はステンドグラスを通してくる明かりとろうそくと電燭の中でミサが行われており、たくさんの信者が敬虔な祈りを捧げていた。ミサの邪魔にならぬよう静かに堂内を一巡した。直径が10メートルあるという寺院正面のばら窓は見事である【写真上中】。30メートル近くあるのだろうか、見上げる高さのステンドグラスが横一面の壁面を飾る【写真上右】。第二次世界大戦の際は、多くのステンドグランスが破壊を免れる為に安全な場所に避難・保管されたと聞いている。いわば、信者の宝、国の宝として保護されたのであろう。これからは信者の為のみならず、確かに後世に残していかねばならない美しく貴重な文化遺産であると思う。
 クリスマスが近づいているので、堂内にはキリストの誕生の様子を表す場面が、人物や動物を配して美しく作られていた【写真】


◆ サント・シャペル訪問
 サント・シャペルは、かって、パリを訪ねた時の思い出の中で、何処よりも美しいと感じた小さな聖堂である。ステンドグラスで囲まれたその小さな空間は、まるで、宝石の玉手箱に入ってしまったような、そんな魅惑的で気品ある美しさであった印象を忘れることが出来ない。同じシテ島に在り、大聖堂からも近い距離なので、訪ねてみた。
 これは、聖王ルイ9世が1248年に個人的に建てた聖堂と言われているが、当初からその透明感のあるステンドグラスの美しさは有名であったらしい。しかも、これがフランスで最も古いステンドグラスと言われている。しかし、革命時代に大きな損傷を受けたため、凡そ50年前に大規模な改修工事が行われ、現在の美しい聖堂が復元されたようである。
 21年前には、訪れる人は少なかったと記憶しているが、上階の礼拝堂には沢山の観光客がいた。フロアの両サイドに並べられた長椅子は満席の状態であった。以前にはなかったものだが、椅子に腰をおろして、ゆっくり見上げて下さいという思いやりの長椅子である。席の空くのを待って、僕も腰を下ろして鑑賞した。しかし、冬の陽射しは低いので、輝く美しさはステンドグラスの上方半分だけであった【写真】。バラ窓も傾いた午後の陽射しに輝きは弱いものであったが、見事に美しいものであった【写真】。一人しか通れない狭いらせん階段を降りると【写真】、そこにはイスラム美術や東洋的幻想美も感じられるこじんまりとした美しい聖堂があった【写真】
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↑ステンドグラス
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美しい聖堂
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↑ばら窓
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螺旋階段を下る

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牢獄の空
 ついでながら、昨年2001年度の出版であったと思うが、この聖堂の「薔薇窓」を題名にして、作家・帚木蓬生氏が小説を発表された。およそ100年前のパリを舞台にした物語だが、大作ながら一気に読ませる魅力に満ちた作品であった。ご一読を薦める。


◆ コンシェルジュリー訪問
 サント・シャペルのすぐ隣にあるので立ち寄ってみた。フランス革命の時、恐怖の象徴となった当時の牢獄である。マリー・アントワネットも此処に投獄され、凡そ2600人もの人物がギロチン台に送られ、処刑されたそうだ。牢獄の様子を紹介するビデオを見た。独房やマリーアントワネットが幽閉されていた部屋など、等身大の人形が配されて一般公開されていた。中庭に出て狭い空を見上げたら、逃亡を防ぐ鋭く長い鉄針が、重く沈んだ空に黒く突き刺さっていた【写真】


◆ セーヌ河畔を歩いてオルセー美術館へ
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セーヌ河畔をオルセーへ向かう
 河畔名物にもなっている様々な種類の物を売っている出店【写真上】を冷やかしながら歩く。古本をはじめポスターやカード、絵はがきや複製画、土産品、カセットなどなど、のんびり眺めれば楽しいだろうと思うのだが、何しろ寒い。寒風に押されるようにしてオルセー美術館へと急いだ【写真左】。ルーヴル美術館とセーヌ川を挟んで向かいあって建っているのが、人気を2分しているオルセーである。
 陽は既に地平線近くであるが、時間はまだ3時を過ぎたばかりである。

 オルセー美術館の入口にも、長い行列が出来ていた。此所でもパスのおかげで優先して入館する。初めて訪ねる美術館だし疲れてもいるので、今日は大まかに見るだけにするつもりである。
 写真やテレビの映像では、今までに何度もお目にかかっている美術館である。その為か新鮮な印象は受けなかったが、やはり実際にその場に立ってみるとその空間の広さや独特の雰囲気には格別のものがあった。
 ともかく、腹ごしらえをしようと、最上階のレストランに行き、その後、印象派後期印象派の沢山の作品を鑑賞した。
 閉館は6時である。1時間前から館内放送があり、日本語による案内もあった。5時半には館内の総ての営業を終了すると言う。6時は、職員の勤務時間終了の時間であり帰宅開始の時間でもあるらしいことが分かった。急いで売店に寄り、オルセー美術館所蔵作品の画集を1冊購入した。次回の訪問に備えようと思う。


◆ 地下鉄で帰途につく
 美術館の職員に尋ねたら、地下鉄よりもRERを利用した方が時間的に早いと言うので、今夜はこの路線を使うことにした。RERとは高速郊外鉄道のことで、通勤の足として開発された路線である。通常のメトロよりも駅間距離が長く、高架線を走りパリ市郊外まで線を延ばしている。運賃は地下鉄と同じであり、地下鉄の回数券で乗車することが出来るのはとても合理的でいい。
 電車は2階建てに作られてあり乗客の少ない車内は広々としていた。展望の良い2階に座り、パリの夜景を眺めながら帰途についた【写真】<写真14>。ホテルに近い降車駅は、セーヌ川に沿いエッフェル塔に近づいた地点であった。駅から降り立った地点がビル・アケム橋の交差点であり、エッフェル塔を眺めるために橋の中程まで歩いていった。全身を電燭で飾られた塔は、セーヌ川に美しい姿を写し、夜空に聳え立っていた。塔の頭からは、青い色のサーチライトがゆっくり回転しながら、パリの上空を照らしていた【写真】<写真15>。セーヌの流れの上から眺めていると、それはちょうど灯台のようでもあった。
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RERの車内
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夜のエッフェル塔→ 

◆ 白鳥の小道
 此所から自由の女神が立つグルネル橋まで、セーヌ川の真ん中に一直線に作られた「白鳥の小道」と呼ばれる散歩道がある。街路樹やベンチなども整備されており、市民の憩いの場となっているそうだが、今夜は厳しい寒さのせいであろうか人の姿も見当たらず、殊更に静かで快適な道であった。時々遠ざかるエッフェル塔を何度も振り返っては眺め、左右に往来する観光船や町並みの景色を楽しみながら、女神像へ向かって歩いた。ホテルは、女神像から歩いて1分の所である。

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