★ 1999-2000 ポルトガルの旅
 ◆ 2日目(1月1日) 【旅の全体地図】 目次へ
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【本日の旅程】=マルヴァン→モンサント→トロンコソ(泊)

◆ 2000年紀の夜明けを迎える
 2000年紀へのカウントダウンは、最初リスボンのコメルシオ広場で賑やかに!と計画していたのですが、いろいろ訳があってここマルヴァンの静かな山頂で迎えることになりました。午前0時が近づくにつれ、山頂には人々が集まり、0時を期して沢山の花火が打ち上げられました。絢爛豪華に!とはとても言えないパフォーマンスでしたが、ともあれ2000年紀への幕開けを演出してくれました。出来ることならヒマラヤの、或いは雪で白いアルプスの、どこかのピークで迎えたかった新年紀の夜明けでしたが、ま、此所だって、考えてみれば山の上、立派なマルヴァン山系の、歴史ある一つのピークではないですか!(負け惜しみです)
 山頂の一画に在る暖房の効かない小さなホテルのベットの中で、寒さに震え乍ら2000年紀の最初の日の出を待ちました。

 マルヴァンは、スペイン国境から10キロ離れた山上に在る小さな町です。海抜860メートル余りの山頂は、ぐるりと城壁に囲まれており、一番奥まった山頂部分にお城があり、その周りは切り立った断崖です【写真下左】。自然の要塞そのものに見えます。お城の前に小さな小学校や教会があり、それらを支えるようにして住居が日当たりの良い斜面に建ち並んでいます。道は石で敷き詰められており、すべての家も石で造られています。白い壁、そして赤い屋根、適当に緑の木々も配された家並みの眺めは、青く澄み切った空を背景にして落ち着きとカラフルな美しさに光り輝いていました【写真下右】。朝食もそこそこにして、スケッチに精をだしました。


マルヴァン城 全景


マルヴァンの家並み
山頂に建つ マルヴァン城→
【マルヴァン城・油彩画の完成作品はこちら】

◆ ローマ橋
 山麓を流れる小川に、ロ−マ橋と呼ばれる年代ものの石橋が架けられていました。今は、川床が盛り上がっており川幅は2メ−トル位しかありませんが、橋が造られた頃は10メ−トル以上はあったと思われます。当時、通行料を払わなくては通れなかったそうですし、水量が多く、流れも早かったに違いありません。凡そ2000年の歴史を刻んでいるその橋の幅は3メートル位、長さ20メートル余り。絶えぬ流れと長い風雪に耐えてびくともしないその姿には、それなりの風格を感じさせるものがありました【写真】
 この橋の近くで、ポルトガル先住民の遺跡発掘作業が進められていました。円い石柱が並ぶ建造物は、ローマ時代のものと思われます。かっては、水の便がよい平地で生活していた彼等も、度重なる戦いから身を守るため、生活の場所を高い山上へ移さざるをえなかったのだろうと思います。そうした人々の、ドラマチックだっただろう長い歴史を見守ってきたこの橋、眺めているだけで、時の経つのを忘れてしまいました。橋の向こうに、どっしりとしたマルヴァンの山並が望まれました。



◆ モンサント
 マルヴァンから更に北へ向って走り、モンサント<Monsanto>にやってきました。此所は、田舎のなかの田舎、『ポルトガル一ポルトガルらしい村』というキャッチフレーズのついている町です。マルヴァンと同じように、山上にはお城の廃墟があり、山頂近くには立派な教会があって、それを取り巻くように石で出来た家々がびっしり軒を列ねて建ち並んでいます。今日は、年の始めの日曜日だから特別なのでしょう、綺麗に着飾った山麓の村人たちも多数教会のミサに集まっており、山は結構賑わっていました。

古い石橋のローマ橋



巨石を利用した家


赤い屋根のモンサントの家並み

【油彩画の完成作品はこちら】
【水彩画の完成作品はこちら】
 ポウザーダのレストランで昼食をとることになりましたが、料理の出来るのをボ−ツと待っている訳にはいきません(今日は特別時間がかかりそうなのです)。G氏と僕は、寸暇を惜しんでスケッチに出かけました。
 ←スケッチをする僕。この後、事件(笑)が。。。


◆ ザック置き忘れ事件!(^^;
 スケッチを済ませてザックに道具を仕舞った後、何枚か急いで写真を撮り、大切なカメラを手に仲間が待つ食堂に急ぎました。汗を拭き乍らテーブルに着き一息ついていましたら、『絵を描いていた東洋人は居ないか、と村の老人が尋ねているが君のことではないか』と世話役のK氏に聞かれました。??、兎も角その老人に会いました。鬚を貯え、黒い衣装の小柄な男でした。開口一番、『お前さんは忘れ物をしてはおらんかね?
緑のザックなんだがーー』と。瞬間、天地のひっくり返る思いをしてしまいました。
 
 『俺に付いて来い』と言う老人と一緒に先程スケッチしていた所に駆け戻ると、同じ様な身なりをした10人程の男たちが、僕のザックを囲んで立っているではありませんか。仲間同士、『おー見つかってよかったな!』と言う感じの会話が交わされました。僕はメチャクチャ嬉しくて、その男達に抱き着いて感謝の気持ちを伝えました。その老人たちは、近くの村からこの山の教会に礼拝に来ている人たちでした。
『東洋人を見るのは初めてだ』と言っていました。だから、それとなく観察をしていたのだそうです。それにしても、僕にしてみれば、奇跡が起こったのだと思わずにはおられません。しかもここは、この地方では有名なモンサント、つまり聖なる山であったのですからーー。それは兎も角、僕も焼きがまわったものです。背中のザックを置き忘れてしまうなんて!
  
 幸運に感謝し乍ら更に1枚スケッチを完成させて山を降りてきたら、先程の老人たちがお店でワインを飲んでいるのに出合いました。きっと、僕のことを酒の肴にして盛り上がっていたに違いありません。赤い顔した一人の男が、グラス片手に走り出てきました。『よー!一緒に一杯やりませんか!』たまたまその場に居合わせた世話役のNさんも、心から嬉しそうに応対してくれました。『せめてものお礼の気持ちだ、皆んなでビールでも飲んで下さい!』と、先程無理やり受け取ってもらったお金が赤ワインとなり、みんなを幸せな気分にしてくれたのでした。振り返りながら思いました。やはりあの男たち、モンサントに降り立った昔
エンジェルたちではないのだろうかーーーと。


◆ トロンコソ<Trancoso>
 サンモントから、更に北へと向かいました。そして、この地方では大きな
山上都市であるトロンコソを訪ねました。しかし、生憎の天候に遭遇してしまい、1枚のスケッチも物にする事が出来ませんでした。今夜はここの街に宿泊です。

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