★ 2001 『K2』へ〜 パキスタン(カラコルム)訪問の旅
 ◆ 6日目(9月5日) 【旅の全体地図】 目次へ
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【本日の旅程】=スカルドゥ・カチューラ・スタックチン村

◆ 快晴の朝を迎える
 予想通り、快晴の朝を迎えることが出来た。風もなく、湖は鏡となって、地上のすべてを見事に映し出していた【写真下左】。それは、吸い込まれてしまいそうな深く美しい景観であった。朝日を受けて木立の緑が爽やかである。レストランの赤い屋根も、一段と鮮やかに輝いて見えた【写真下右】。日陰になっているが画面の右側に見えるのは、飛行機を改造したホテルである。その昔、実際に空を飛んでいたものだそうだ。中に入ることは出来なかったが、ベッドが4つ、バスルームも居間もあるという。値段は特別料金だそうだが、何ともこの場には相応しくない施設であると思った。しかし、本物の飛行機に乗ったつもりで、世界一周の夢をみながら一夜を過すことが出来れば、それはそれで楽しい施設かもしれない。それにしても、この大きな飛行機を、どうやって此所迄運んできたのだろうか?出発の準備を整え、空軍基地からの連絡を待った。

快晴の朝
←水鏡に映える

09:40 コンコルディア降雪のため、フライトはキャンセルする。
 期待に反した連絡がもたらされた。ガッカリである。此所はこんなに快晴なのに、何故かコンコルディアは雪になっていると言う。仮にこれから急速に晴れたとしても、もはや時間的に無理である。やむなく、本日の予定はキャンセルすることになった。代わりの行動スケジュールが確定するまで、湖畔で写生に取り組んだ。

11:10 ジープで北カチューラへ。

◆ カチューラ湖(Kachura Lake)で写生 ジープでなくては登れない山道を30分ほど行くと美しい湖があるというので、昼食持参で出かけることになった。途中の見晴らしのよい地点から展望を楽しんだ。朝のうちは雲一つない快晴であったのに、いつの間にか沢山の雲が拡がっていた。ジープが進むことの出来る道のぎりぎり限界まで行き、徒歩で少し登った所に見晴らしのよい山小屋が1軒在った。
 目指すカチューラ湖は100m位であろうか、木立を通して眼下に見ることが出来た。谷間を走り抜ける風が、次から次へと湖面に幾筋もの白い線条痕をうねらせた。冷たく強い風は木立の間を走り抜け、その都度、立ち木は大きく揺さぶられていた【写真右】。小屋のテラスからも良く見えたが、湖畔まで下ることにした。急斜面に付けられた石段を立ち木に掴まりながら慎重に下った。湖畔には陽が差したが風が強くて、スケッチブックを開けることが出来ない。やむなく風に邪魔されない場所を求めて斜面を登った。幸い中程の所に格好の岩陰を見つけることが出来た。絵を描き始めたら、ガイドのS君が弁当を持ってきてくれた。皆さんの食事休憩の時間が、僕が仕事の出来る時間である。サンドイッチを食べながらの忙しい写生であった。

13:15 さらに谷の奥へ。
カチューラ湖→

◆ スタックチン村での事件
 腹ごしらえが出来たところで、更に谷の奥へジープを走らせた。スタックチン村を通り過ぎ氷河が見えるところあたりで停車。谷の奥にスタックチン氷河の舌端が小さく見えた。谷はまだまだ深く、更に近付けば、氷河の姿は見えなくなると言う。ここ
からUターンすることにした。しかし、時間はたっぷりあるので、スタックチン村まで散策しながら歩いて下り、村の中を覗いてみようということになった。その村は、小さな集落であった。めったによそ者が来ることはないのであろう。幼子は、素朴そのものである【写真下】。子供たちが集まってきた。撮影しようとすると、カメラの真前に群がった【写真下】。特に力のありそうな悪がきは、他の子らを押し退けてレンズの前から離れようとしなかった。この村も例外ではなく、女の子たちは隠れてしまい、姿を見せてはくれなかった。遠くから笑顔で見守る少女を望遠で引き寄せ1枚だけ撮影した【写真下】。実に可愛いい。ちなみに、女性たちが姿を隠すのは、恥ずかしいから、という理由だけではない。特に大人の場合、宗教上の理由から関係のない男に素顔を見せてはいけないと教えられているし、そう信じている者が多いから、場合によっては大事件になることだってあるのである。だから、無理な撮影は控えなくていけない。

 土壁で出来た集落の中を、建物を撮影しながら通り過ぎようとしたら【写真左】、女たちが屋上に集まって騒いでいた。見上げたら、その中の年寄りがこちらを見下ろして怒鳴っており、凄い形相で手を振り上げ何やら投げつけようとするところであった。拳大の木の実が飛んできた。本気で怒っているのを知って驚いた。撮影されていると誤解したのであろうか。或いは、誰かが実際に撮影したのかもしれない。言葉は通じないし、急いで逃げるしかなかった。ごめんなさいと呟きながら、走って難を避けた。石つぶてでなくて幸いであったが、非がこちらにあるのは明らかなのだから仕方がない。情けない思いと後味の悪い思いを噛み締めながら、村から遠ざかった。

 村はずれの河原で全員集合(15:15)。此所から再びジープに分乗してシャングリラへ帰った。まだ陽は高く、夕食の時間迄にはたっぷり時間があったので、湖畔でゆっくり写生に取り組んだ。夕食の席に、再度空軍大佐がやって来た。明日の行動予定についての打ち合わせと話合いの為である。特別な事情が発生しない限り、明朝のヘリ飛行は大丈夫だろうという。ヘリの積載能力の関係で、先発組と後発組に別れることになり、抽選の結果、僕は後発組に回ることになった。時間的には1時間半遅れて出発することになる。先発は7時。どうせなら、早く行きたいと思ったが、仕方がない。明朝は、ゆっくり朝寝坊ができるのをよしとしよう。スタンドの灯で、旅の記録を整理した。

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