★ 2001 『K2』へ〜 パキスタン(カラコルム)訪問の旅
 ◆ 5日目(9月4日) 【旅の全体地図】 目次へ
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【本日の旅程】=デオサイ高原→スカルドゥ

7:56 キャンプ地発
 朝から雨。高原には冷たい雨が降っていた。遠くに見える山並みの山頂附近は白く雪化粧していた【写真1】。低く重なりあう雨雲が、高原を暗くしていたが、幸いにして風は穏やかで、天候は回復に向っているように思われた。昨日は、土ほこりで白くなっていたジープであったが、今朝方にかけて降った雨が、しっかり汚れを落としてくれたらしい【写真2】。更にバケツの水で綺麗にしているドライバーの姿もあった。売店には今朝も人影なし【写真3】。ほんとに、商売になるのだろうか?
 凍るように冷たい水で洗面を済ませたあと、慌ただしい出発の朝のメニューをこなす。

8:25-8:35 再度パラパニ川を渡る。
9:06     デオサイ高原を降りはじめる。
← 1. 小雨降る高原の朝


2. 雨に濡れたジープたち

3. 人影のない売店


◆ 厳しい生活の道

4. 隊商とすれ違う
 嶮しい断崖の道が続いた。ジ−プ1台が漸く走れるほどの道幅の道で、登ってくる隊商と出会ってしまった。安全の為、ジープは動きを停めた。彼等は慎重にジープとすれ違った。馬やロバは優しい目をして通り過ぎたが、馬上の男たちは硬い表情のまま去って行った【写真4】。どんなにか辛く苦しいキャラバンなのだろうと思う。
 乾いた山肌を剥き出しにしたままの荒々しい山道を、ジープはひたすら慎重に下り続けた。何時落石があっても不思議ではない急斜面の道が続いた【写真5】
 山肌に緑が見られるようになったあたりで、羊飼いに出会った。棒を手にした一人の男が沢山の山羊を急な斜面に追い上げていた【写真6】。山羊も男も、生きて行く為の緑を求めて一生懸命である。痩せた山肌に根付こうとする草木も、厳しい自然に耐えながら懸命であるに違いない。そんな若い緑を容赦なく食べてしまう山羊は、言わば自然の破壊者である。しかし、野生ではない山羊が、自然破壊を進めていると指摘してみても何の解決にもならない。命と命がせめぎ合っている厳しい現実は、それなりに容認しない訳にはいかないからである。ふと、スイスやオーストリアの緑溢れる山野の風景を、思い浮べた。カウベルの平和な音がこだまする谷と、落石の音に緊張を強いられる嶮しい谷と、何と言う格差の大きさであろうか。

5. 急斜面を下る

6. 羊飼いの群れ


◆ 蕎麦の花咲くサトパラ(Satpara)村 10:45
 谷川に沿った斜面に作られた段々畑には、一面、白い蕎麦の花が咲いており、なかなか美しい眺めであった【写真右】。日本の山村風景を思わせる懐かしい景観であった。段々畑の中程に、家々が肩を寄せ合うようにして建つ小さな集落が、清らかな白い花に包まれるようにして、ひっそりと在るのが見えた。目を凝らして見たが、人影はなかった。しかし、穏やかで静かな眺めは、心安らぐ思いがした。ちょっとの時間ジープを停めてもらったが、此所は狭い下りの山道、ゆっくりしていることは出来なかった。

10:50-56 警察のチェックポストで手続きを済ませる。
11:14 デオサイ高原国立公園出口。再び訪れる機会はないと思う。振り返って別れを告げた。
蕎麦の段々畑→
◆ サトパラ湖畔で休憩 【写真左】 11:30-12:00
 此所は人造湖であるが、観光開発に力を入れようとしているらしく、湖畔にはレストランを建て、眺望のよさそうな丘にはレストハウスの建設が進められていた。しかし、特に魅力的な景観とも思えず、何がチャームポイントなのか良く分からない湖であった。

12:20 スカルドゥ(2,250m)着
インダス川沿いにあるK2モーテルにて昼食。
山に囲まれて建つこのモーテルは、K2登山を目指す人たちの基地になっているそうだ。

13:30 K2モーテル発
14:18 スカルドゥの北西30km、カチューラにあるコテージ風のシャングリラ・リゾート・スカルドゥ着(シャングリラ・リゾート・スカルドゥ泊)
←サトパラ湖畔入り口


◆ 夢見るような別天地
 スカルドウから車でおよそ40分、荒涼とした景色の中を走った。山に向って走った。乾いた山肌ばかりが続く山麓に、緑が茂っているのが遠くから見えた。砂漠の中のオアシスを思わせる色である。其処が、今夜と明日の宿泊地:シャングリラであった【写真9】
 其処は、四方を高い山に囲まれた美しい別天地であった。中央に大きな湖があり、その周りには赤い屋根のコテージが並んでいた。何故かビルマ風に反り返った屋根の建物がレストランであり【写真10】、それら赤い建物が水面に投影されていて夢のように美しい【写真11】。湖には白鳥が優雅に泳ぎ【写真12】、湖畔に敷きつめられた芝生のみどりが気持を和ませてくれた。庭に立つリンゴの木には、赤い実が沢山実っていた。湖畔に茂る柳の枝が、風を受けて緩やかに揺れ、その下を縫うようにして白い散歩道が続き、それは湖を一周しているようであった。道に沿った花壇にはバラの花が咲いていた。手入れの行き届いた正に素敵なシャングリラ、ホッと休息出来る別天地のように思われた。

9. シャングリラ入り口

10. 赤い屋根のレストラン

11. 湖畔のコテージ

12. 湖の白鳥
 僕が宿泊することになったコテージは、レストランに一番近い場所に建っていた【写真右】。一つ屋根の下に独立した二つの部屋があり、向って右側を僕が、左の部屋をSさんが使うことになった。玄関ドアを開けると椅子とテーブルがあり、二つのベッドがスタンドで繋がり、ドアで仕切られた隣の部屋がシャワ−・洗面・トイレ専用である【写真下】。テレビもラジオもない、いたってシンプルな部屋である。しかも、二人用の部屋を一人で使わせてもらうので、雑音も気兼ねも無い。贅沢なことだが、気侭に過ごせるのが、何より嬉しい。
宿泊したコテージ→

居間

寝室

トイレ&シャワー室

久しぶりにシャワーを使ってサッパリすることが出来た。写真で見るように、カーテンはなく、赤い大きめのポリバケツが1個置いてあるだけである。この、バケツは非常用?。この地方のホテルでは通常、シャワーからは必ずお湯が出ると決まっていない。お湯の供給は大変不安定なので、その対策用として備え付けてあるのであろう。途中から水になっても、前もって必要なお湯を溜めておけば心配ないという訳だ。だから、先ずはお湯が出ることを確かめて桶に溜め、裸になるのはそれからである。桶のお湯は、洗濯用に使わせてもらった、という人もいた。

 明日は、いよいよ憧れのK2に対面出来る日である。パキスタン空軍のパイロットがレストランまで来てくれた。彼は、今回のヘリ輸送を取り仕切ってくれる空軍大佐であった。貫田氏と最終の打ち合わせをする為に来てくれたらしい。立派な髭をたくわえいかにも軍人らしいがっしりした体格の男で、それだけでも何となく頼もしく感じてしまうから面白い。
 日本からこっそり持参したというブランディを提供してくれるメンバーがあり、少しずつ分けあって前祝いの乾杯!晴れることを願って乾杯!K2のふもと、コンコルディアまでの無事の飛行を祈ってまた乾杯した。
 レストランを出て夜空を見上げると、沢山の星がキラキラと煌めいていた。明日は晴れるに違いない。わくわくしながら荷物や装備を点検して、早めに休む。
 湖畔の夜は、完全な静寂に包まれた。

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