★ 2001 新春ネパールの旅
ネパール国旗  ◆ 5日目(1月17日) 【旅の全体地図】 目次へ
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【ポカラ周辺地図】
【本日の旅程】=チャンドラコット→(トレック)→オーストリアンキャンプ(テント泊)

 寒かった。寒さで何度か目覚め、トイレに起きざるを得なかった。テントを出ると、満天に無数の星が輝いていた。何度見ても心ときめく美しい眺めである。星明かりだけでは足元が暗く、懐中電灯をつけて用を足しに行く。思いがけない所から、すっと照明が飛んできたので一瞬驚いた。警備についているシェルパが確認しているのだと了解する。「ご苦労さん」の手を上げて応えたが、やたらな所で用を足すことが出来なくなった。夜中の2時頃になって、半月が姿を見せた。それだけで、青白い光に照らされたキャンプ地に、もう懐中電灯は必要なくなった。


◆ キャンプ地の朝
 6時、テントにモーニングティーが運ばれてきた。甘味を利かせて熱い紅茶を飲むと、しっかり目が覚めた。よく寝ているらしい家内は、もうしばらくそっとしておくことにしてテントを抜け出した。外は未だ暗く、天空には沢山の星が煌めいていた。
 6時半、家内を起して、モルゲンロートを見ようと昨日SUNSETを眺めた場所へ出かけた。山岳カメラマンのE氏は、すでにスタンバイしておられた。さすがである。  

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アンナプルナ・サウス 朝陽
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マチャプチャレ 朝陽
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 7時頃、アンナプルナ・サウス<Annapurna South;7219m>が燃えるように紅く輝いた【写真】。それはほんの一瞬の間であり、瞬く間に色を失い白い顔になってしまった。その右方向に聳えるマチャプチャレ<Machhapuchhare;6993m>は、何故か今朝も精彩を欠いていた【写真】
 7時半、外に設えられた一つの長いテーブルを囲んで朝食。お粥、スープ、トースト、ハムとソーセージに野菜炒め、卵焼き、テイー。なかなか立派なメニューである。ジャポニカ米のお粥にジャムを入れて食べていたら、回りの人たちが気持悪そうに見ていた。お粥には塩と梅干しが定番になっているが、こうして食べるのも美味しいんだよ。更にもう一杯お代わりをして食べた。


◆ 快適なトレッキング  【トレッキング案内地図】  
 8時半出発。今日は標高2200メートルのオーストリアン・キャンプまで、約5時間のトレッキングである。此所の標高は1560メートルだから、結果的には600メートル余りを登ることになるが、途中何度か登り下りをしなくてはならないから、トータルとしてはほぼ1000メートル位を登ることになるのであろうか。山の北西斜面を北から東方向に大きく迂回し乍らオーストリアンキャンプに向う。板石が敷き並べられている山道は、油断をすると滑ってしまう。途中、一人が滑り山側の窪みに落ちた。緊張が走ったが、落ち方と場所がよかった所為で打ち身も傷もなく、何事もなく済んだのは誠に幸いであった。緊張を持続しながらの歩きは、結構疲れるものである。何人かの人は、若いスタッフにザックを担いでもらうことになった。勿論、家内の荷物もスタッフに担いでもらい、ストック片手に転ばないよう慎重によく頑張って歩いた。時々、「ビスターリ!」(ゆっくり)と最後尾を歩くサーダーが先頭に立つシェルパに指示を出す。終始ゆっくりしたペースで歩いているのだが、何せ中高(老)年のグループである。起伏が連続する山道では、思うようには足が動いてくれないのである。

 担ぐ荷物は軽いし、午前の山の冷気も気持良く、20分から30分おきに小休止をとり乍らののんびり歩きだから汗をかくには至らない。東側斜面に出たらタンチョック<Tanchauk>村、再びアンナプルナ連山が姿をみせた。展望を楽しみながら快適に道を辿ると、まもなくポタナ<Pothana>村であった。此所まで約4時間のトレッキングであった。この村で大休止。展望の良い草地に敷かれた青いビニールシートに腰を下ろすと、早速紅茶のサービスがあり、新鮮なみかんが配られた。そして間もなく昼の食事が運ばれてきた。(ラーメン、ライス、ギョウザ、サラダ、フルーツ)
 仲間たちが食事をしているのを少し眼下に見下ろし乍ら、より展望の効く高台に一人座り込みアンナプルナ連山の写生に取り組んだ。大休止のお陰で2枚描くことが出来た。
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皆から離れて一人勝手な行動を取ったにも拘わらず、キッチンボーイはわざわざ僕の所までお茶やミカンや、食事を運んできてくれた。感謝、感謝である。

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↑アンナプルナ・サウス<Annapurna-South;7219m>
←マチャプチャレ<Machhapuchhare;6993m>
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ポタナ村とアンナプルナ連山
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アンナプルナ2峰<Annapurna-2;7937m>(中)
アンナプルナ4峰<Annapurna-4;7525m>(左)


◆ オーストリアン・キャンプ
 オーストリアン・キャンプには、此所から30分余りで到着出来た。チャンドラコットより何倍も広々とした場所であり、北東の方角にアンナプルナ連山を見渡すことの出来る素晴らしい展望台でもあった。すでに雛壇状のキャンプ地には青いテントが張ってあり、炊事場では夕食の準備がすすめられていた。
 割り当てられたテントに寝袋を広げ、夜に備えた。4時から、TEA BREAK。クッキー、クラッカーも用意されたらしいが、夕食時間までは、僕にとっては貴重な写生タイムである。より展望の良い高所に陣取り、写生に取り組んだ。他にも3名の方たちがスケッチを始めた。陽が傾くにつれ、冷たい風も吹き始め辺りは急速に冷え込んできた。昨日より高度が高い分、寒さも厳しいようである。やむなく途中でテントに引き返し、セーターを着込まなければならなかった。

 6時頃、昨日とはうって変わり、夕映えのヒマラヤは、すっきりとした美しさを見せてくれた【各写真】。 赤味を増し乍ら少しづつ変貌していく山々、ヒマラヤならではの雄大なスケールに圧倒されて立ちすくむ。荘厳かつ華麗な眺めに寒さを忘れて見とれてしまった。此所まで来てよかった、苦労して来た甲斐があった、としみじみ思う。

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オーストリアン・キャンプ
↑左写真、アンナプルナ4峰<7525m>(左端)、アンナプルナ2峰<7937m>(中央左)、
ラムジュン<Lamjung;6931m>(右端)

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アンナプルナ・サウス
<Annapurna-South;7219m>
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マチャプチャレ
<Machhapuchhare;6993m>


◆ キャンプファイヤー
 今夜は、ヒマラヤトレッキングの思い出に、全員でキャンプファイヤーを囲み、ロキシー飲んで踊り歌い、楽しい夜を過ごしましょう!ということになった。しかし、心の片隅で「いいのかな」と囁く声があり、いささか後ろめたい気持を払拭出来ないままに参加することになってしまった。
 近年、バングラデシュが洪水で被害を受けるようになったのは、上流のネパールにも原因があるのではないか。つまり、原因の一つにはトレッカーたちの炊事用やキャンプファイヤーに供する為に沢山の木が伐採され、山の保水力が低下したことに因るのではないかとの意見があって、キャンプファイヤーは自粛されていたはずである。日本山岳会としても、自然保護を目的にネパールでの植樹活動に力を入れ、長期の展望に基づく計画的な運動を推進しているということも承知しているからである。
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 スタッフたちの仕事が終るのを待って、広場に用意された薪に点火された。火のまわりに集まった全員に地元の酒:ロキシーがふるまわれ、紅い炎は夜空に音をたてて燃え上がった。二人のスタッフが太鼓を叩き、リズムに合わせて歌声が流れた。スタッフが率先して踊りだし、勢いを増した炎に頬染め乍ら、踊る人の輪も広がっていった【写真】。彼等は、我々をもてなす為に、そして自分達も共に楽しむ為に贅沢なキャンプファイヤーをより一層盛り上げてくれたように思う。
 用意された薪が燃え尽き、今夜のイベントは終了した。我々がテントに引き上げた後も、彼等だけで楽しむ太鼓と歌声は、しばらく止みそうにもなかった。カメラマンのE氏は星空の撮影を始めた。共にしばし降るような星空に見とれていたが、厳しい冷え込みには勝てず、ともかくシュラフに潜り込んだ。太鼓の音は次第に遠ざかっていった。

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