クライネシャイデックからヴェンゲン・アルプまで歩いて下るのは断念した。しかし、このままホテルへ帰る手はない。ヨッホを見上げると雲一つなく、もう一度行ってみようかとも考えたがワンサといる日本人の群れを思って二の足をふむ。空腹を抱えて、グリンデルワルドへ登山電車で下り、直ぐ接続しているバスでグローゼシャイデックへ往復しようと考えた。フィルストからグローセシャイデックまでは、下り1時間30分のハイキング、と案内にはあるが、この足では無理だ。せめてグローセシャイデックからフィルスト方面に少しだけ行って、アイガーがカミソリの刃のように見えるかどうか、そして、尾根がマイリンゲン方向への谷とグリンデルワルド方向への谷を分ける馬の背のようになっているかどうかを見てやろうと思った。
クライネシャイデックからグリンデルワルドまで45分の電車に揺られながら、去年のIさんとの旅を懐かしく思い出していた。今日は、いささか元気がないし、暑いから無理することはないと思う。しかし、この風景を見るだけでもグリンデルワルド回りにした意味がある・・・などと考えた。車中でサンドウイッチをほおばり紅茶を飲んだら少し元気が出た。
グリンデルワルドに着いてもまだ少し迷っていたが、ホテルリザヴェイションの小屋の隣に黄色いバスがいるのを見て、直ぐに決心がついた。往復切符を買い、グローセシャイデックに着いたら教えてくれるようにドライバーに頼む。東洋人の女で乗ったのは私一人だけ。タイムテーブルによれば約25分で峠に着く。切符を買う人が多く、発車はかなり遅れた。街中を抜け教会の脇を通って、バスはぐんぐん高度を上げた。ローゼンラウイ氷河の近くでは見物客が多いらしく、駐車場には自家用車が沢山並んでいた。バスの乗降客も多い。
バスは、懐かしいホーンを鳴らしながら、蛇行する道をなおも高度を上げながら走った。アイガーがどんどん形を変え、岩の塊のような山ではなく、頂上は板のような形だということが分かった。ヴェッターホルンは、正に三角形の、こちらに被いかぶさる壁のような山になる。メンリッヘンからクライネシャイデックへのルートから見るのとは、全く違う無骨さである。やがて、バスはグローセシャイデックへ到着した。
[→First]の道標を見て、少しだけ歩いてみた。確かに馬の背。花が咲き乱れ、風は心地よく、陽はサンサンと降り注ぐ。ハイカーも三々五々、楽しそうに行き来する。日本人は一人もいなかった。14:40分のバスでグリンデルワルドへ下ることに決め、それまでの少しの時間、峠のレストランの野外テラスでコーラを一杯飲んだ。トイレに行ったら大混雑!焦った。並んでいた女性達のJa,ja!の声援に力を得て、男性用トイレを借用、お陰でバスに間に合った。
帰りのバスもほぼ満員。急げばグリンデルワルド15:20発の電車に乗ることが出来たが、30分遅らせて、観光案内所に寄った。グリムゼル峠越えのロマンティックルートバスのことを聞いたのだが、係の女性は全く別のパンフレットをくれた。Hotel
Roseneggのことも聞いてみたが、そんなホテルは存在しない(実際には改築中らしかった)との返事。どうも、未熟者だったようだ。日本語観光案内所にも寄って同じ質問をしたところ、思いがけなく、三つの峠越えのツアーバスのパンフを入手することが出来た。時間的にも都合が良い。これに決めようと思う。スーパー入り口でバナナを買い、15:50発の電車に乗る。2度乗り換えて、ヴェンゲンに16:49着。観光案内所に寄って、マイリンゲンのホテル情報のことを尋ねると、今朝応対してくれた女性は忘れてしまっていたらしいが、ちゃんと立派な2001年版パンフレットを出してくれた。案内所の係にもいろいろな人がいるということだ。
Mは何処にも出かけず、1日絵を描いていたそうだシャワーを浴び、洗濯をして、19時、夕食。今夜は客が少ない。
陽が沈んでもいい天気、ユングフラウの上空にかかる月が夢の様に美しい。パッキングをして横になったが寝付かれず、何ヶ月ぶりかで、ハルシオン半錠を飲んだ。
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