★ 2000 のんびり・スイスの旅
スイス国旗  ◆ 23日目(8月2日) 【全体地図】 目次へ
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【本日の旅程】=クール→アッペンツェル(泊)

 フロントでの精算にミスがあり、それを訂正するのに時間がかかり、あまりの不手際にイライラ、機嫌を損ねてしまった家内であるが、「頼まないのにアッペンツェルまでの接続をプリントアウトしてくれたのよ!」と、出札掛の親切にすっかりご満悦である。


◆ 幸せなスイスの犬
 9:22 クール発、今日もガラ空きの列車に寛ぐ。僕らと一緒に子犬を連れた老婦人も乗車。いつも見かけるように犬は座席の下かな、と思って見ていたら、婦人は白い布を隣の座席に拡げて、子犬に声をかけた。子犬は素直に座席に上がるとその布の上に行儀よく座った【写真下】。まるで婦人の孫ででもあるような、自分が犬であることの自覚は感じさせない態度である。見事に躾けられているその子犬に見とれてしまった。
 スイスの犬は幸せだと思う。大事にされているし、しっかり人間社会と共存関係を確立している。乗り物は勿論のこと、ホテルだって同伴可の場合が多い。しかし、聞くところによると、共存出来る犬に限ってのみ生存が許されているのだと言う。人間に迷惑や危害を与えたり躾けに従うことの出来ない犬は、スイスで生きていくことは許されない訳だ。僕は、どちらかと言えば犬好きであるが、日本では、大きな犬に出逢うと緊張する。吠えられて心臓が止まる思いをしたことは何度もある。実際、毎日の様に隣家の犬に吠えられて迷惑しているが、役所に訴えることも出来ずに憂鬱な日常を過ごしているのも事実である。犬が悪いのではなく、飼い主の責任なのである。日本で、他人の犬と仲良く共存出来る日があるのだろうかと思うと吐息がでる。スイスを旅していて、犬に緊張したり、迷惑と思ったことはない。愛され、躾けられた犬は、飼い主と共に幸せであるし、人間にとって最良の友になれると思う。

クール〜アッペンツェル地図 写真をクリックすると拡大画像が見られます
車中の子犬

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アッペンツェル行きの赤い列車


◆ 親切な駅員
 10:56、ザンクトガレン<St.Gallen>に到着した。大きな駅である。アッペンツェル行きの乗り換えホームが13番であることは調べて分かったのだが、駅舎の中にはそのホームが見当たらない。通りがかった駅作業員に尋ねると、俺について来いと言う身振りをして先導、家内の荷物を持って階段を下り、又上がってくれ、駅舎の外に在る13番ホームまで実に気さくな態度で案内してくれた。又しても、思いもかけない駅員の親切に感謝、嬉しくなってしまった。


◆ メルヘンティックな眺め
 11:07、赤い電車は時間通り発車【写真上】。走りだすと、すぐに急な傾斜をぐんぐん力強く登り始めた。レールを見たら、この区間だけ歯車を噛ませているアプト式のレールであった。ザンクトガレンの街を見下ろしたのもつかの間、次第にアッペンツェル地方らしいのどかな風景が広がり始めた。緩やかに起伏する丘は正に緑の絨毯である。実に美しい。丘にはメルヘンティックな家々が点在しており、心ときめくのを感じながら見とれてしまった。


◆ アッペンツェルにてホテル探し
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アッペンツェル駅<Appenzeller Bahnen>
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アッペンツェル 中心街
 11:51、アッペンツェル<Appenzell>着。クールを出た時は晴れていたのに、何だか今にも泣き出しそうな空模様になった。駅前は閑散としていた【写真上左】。「歩き方」を頼りに街の中へ行く。天候の所為だろうか、街の中心と思われる場所にも人影が少ない【写真上右】。まずは、この街での宿を探さなくてはならない。「歩き方」に紹介されていた割引き付きのホテルを打診してみる。不愛想な男が応対、割引きは長期滞在か予約をした人だけだと言う。いささかカチンとくるものがあり、次のホテルを当たってみることにした。ランツゲマインデ広場(現在でも年に一度4月の最終日曜日に住民が集まって野外集会を開くことで有名)に面して建つ感じの良いホテルであったが、レストランはないと言う。3軒目に訪ねたHOTEL LOWEN(3ッ星)のオーナーはとても感じがよく、条件も納得いくものであったので、此処に2泊する事に決めた。3Fの206号室、シャワー・トイレ・TV・冷蔵庫あり、half pensionで二人で一泊 190SF、部屋も綺麗であった。


◆ 小人発見!
 遅い昼食を済ませて街に出た。ホテルのすぐ近くの道端に溢れんばかりの大勢の小人が居た【写真下】。屋根の上にも陽気な小人たちが並んでいた【写真下】。その横に立つ大きなクマが、シャボン玉を作っては撒き散らしている。次々と風に運ばれ浮遊する大小のシャボン玉に童心をくすぐられながら、思いもかけない小人たちとの出逢いに感動してしまった。建物の大きな壁面もすべてアニメの動物でにぎやかな、それは心ときめく玩具屋さんであった【写真下】
 実は、スイスを訪ねる度に、民家の庭に遊ぶ小人たちを眺めては、その可愛いさに見とれ、その小人を街の店に探し求めてきたのだが果たせないでいたのである。今年も小人が居そうな店を何軒も訪ねたが見つけることが出来ず、殆ど諦めかけて居たところであった。それだけに、とても嬉しい発見であった。早速大きな袋に入ってもらい、大事に日本に連れ帰ったことは勿論である【写真下】
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玩具店の屋根の上の小人たち


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小人たちのいる玩具店
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店先の小人たち

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我が家の庭で憩う小人たち

◆ アッペンツェルのお土産
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アルペンビター
 小人たちを連れて一度ホテルに帰る。とうとう雨が降り出してしまった。傘をさして再度街に出た。今回のスイスの旅もあとわずかだし、旅の記念に何か買い物をしようと話合い、街のインフォメーションで相談してみた。まずチーズ、そしてお酒<Alpenbitter:アルペンビター>【写真左】が自慢の物産品だと教えてくれた。
 木彫も盛んであり、私設博物館では実際に彫る作業を見ることが出来ると言うので、もらった地図を頼りに出かけてみたが分からず、近くに住む人に尋ねてみても分からなかった。おかしな話である。その代わり、街はずれに、アッペンツェラーアルペンビターの工場をみつけた。覗いてみたら直売所もあった。試飲を希望したが叶えられず残念であったが、話を聞いて、ユニークな酒であることは理解出来たので買い求めた。街中の小さなチーズ専門店にも立寄った。この店では、希望すればどんなチーズでも試食させてくれた。不安を感じ乍ら買ってきたアルペンビターだったが好みのチーズを少しだけ買い求め、ホテルに帰るとすぐにこれを肴に試飲してみた。すると、両者ともに味も香りもなかなかの優れものではないか。すっかり気に入ってしまった。


◆ 悲しい誕生日
 今日は、僕のバースデイ。めでたく65才になった。と、言っても格別嬉しい訳ではない。よくぞ65年もの長い年月を生きてきた、生かしてもらった、感謝しなくては・・・との感慨に浸るくらいのものである。いつの頃からか、誕生日を迎えることが憂鬱に感じられるようになっている。それは、年々老いて行くのを認めたくないという気持ちが働くからである。所詮、そんな気持ちで揺れ動いているようではまだまだ未熟者である、ということも承知はしているのだがムム。
 ともあれ、ハッピーバースデーにすべく、ワインでも飲んで元気づけようかな、とレストランに出向いた。ところがどうしたことか、窓際の明るく綺麗にセットアップされたテーブルとは別の、部屋の片隅にある薄汚れた暗いテーブルに案内されてしまった。あちらの席には白いナプキンがきちんと置かれているのに、こちらのナプキンは紙。しかも、隣のテーブルでは、地元の客らしい5人の男女がカードに興じてかなり煩い。聞けば、あちらは外来の客用であると言う。話が逆ではないか。従業員ならいざ知らず、自分のホテルに宿泊している客であれば、食事にだけ立寄る客よりも大事に扱われて当然ではないか、と思うのである。釈然としない気持ちにさせられ、悪いことに、出された料理まで不味く思われ、気分的には最低である。お陰でちょっとだけ悲しい誕生日になってしまった。明日のディナーは、キャンセルである。

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