★ 2000 のんびり・スイスの旅
スイス国旗  ◆ 17日目(7月27日) 【全体地図】 目次へ
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【本日の旅程】=ダヴォス(泊)、→リナーホルンからセルティックデルフリへ

 雲はあるが、まずまずの天気である。今日は、のんびりトレッキングを楽しむことにした。7時45分、食堂に降りたがまだドアは閉められたままであった。出直すのもいまいましいので、ホテルの外に出て、日向ぼっこしながら食堂の開くのを待った。


◆ お昼の弁当
 8時オープン。今朝は何故だか段取りが悪く、紅茶を飲み終わった頃に、ようやくパンが出てくる有様、少しイライラさせられてしまった。しかし、パン篭に盛られて、僕らのテーブルに運ばれてきたパンは、言わばあてがいぶち、全部食べてもいい訳である。以前は、余ってしまったパンでも、持ち帰るのは何となく気が引けてそのままテーブルに置いてきたものだが、いつの頃からか、当然の権利じゃないか、と思うようになった。と、言っても元来気の小さい僕ら、権利の行使は出来るだけ目立たないように細心の気配りをしながら、なおかつ堂々と行なうことが大切な態度だと思っている。余ったパンにジャムやチーズを付け、ついでにソーセージも挟んで(ゴメンナサイ)、そっとビニ袋にしまいこんだ。持参のポットにホットウオーターを入れてもらう。今日の昼食は、これでOK心配なしである。


◆ トレッキング
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空中ケーブルでリナーホルンへ
リナールホルン看板
リナーホルン駅名標

 9時、バスでバーンホフグラリス<Bahnhof Glaris>へ。ここから4人乗りの空中ケーブル【写真】リナーホルン<Rinerhorn>(2054m)へ上った。ケーブル駅前には、ここからのコースが詳しく説明された看板が立ててあった。

 目的とするセルティックデルフリ<Sertig Dorfli>の集落まで、ほぼ水平に山腹を巻くようにして整備されている道。間違いようもない単純なルートだが、再度確認をしておく。ダヴォスの町並みを眼下に眺めながらのスカイラインは、子供から老人まで、誰でも歩けるハイキングロードである【写真下左】

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眺めのよいスカイラインを行く
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セルティックデルフリへの道

 午前の日差しは柔らかく、爽やかな風がそっと頬をなでて行く。展望よし。空気よし。深呼吸をしてみる。実に爽快な気持である。のんびり歩き始めることにした。
 遠くから見た目には、何の変哲もなさそうな道であるが【写真上右】、実際歩いてみると、結構変化があって楽しめた。山腹には沢山の花が咲き競っており【写真下】、何度も立ち止まっては見とれてしまった。

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道端に可憐に咲く花々

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岩場を行く
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森林地帯を抜け出る
 コースの途中には岩場もあり、足下に注意し乍ら急な斜面を慎重に通過したり【写真】、放牧されている牛たちの中をこれまた足下の糞に注意しながら通り抜ける場面もあった。日差しが強くなったころ、森林地帯に入った。木漏れ日がきらきら光る木陰の小道は快適な散歩道であった。木立のまばらになった丘の上にベンチを見つけた。ベンチは、木陰の下にあり展望も楽しめる場所であった。小道から少し斜面を上り、そのベンチで休憩。お粗末ではあるが、持参の弁当を拡げでのんびり昼食を楽しんだ。
 森林地帯を抜け出ると【写真】、3つの黒い山(※下記参照)が視界に飛び込んできた。その山麓に開けた草原には小さな集落が在った。目的地のセルティックデルフリ(1860m)の集落である【写真下】
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セルティックデルフリの集落

 真直ぐ緩い斜面を下っていけば、そこが今日のトレッキングの終着点である。まだ今日の時間はたっぷり残っている。山の姿も悪くないし、ここからの眺めを写生しておくことにした。家内には、ゆっくり先に行ってもらい、集落のバス停で待ち合わせることにした。午後の日差しの厳しい斜面であったが、観念して座り込んだ。

(→右写真の背景の山々は、左から Mittaghorn <2735m>、Plattenhorn <3013m>、Hoch Ducan <3063m>)
◆ 小さなレストランにて
 集落の中心にバス停があり、バス停の向い側に、小さなテラスレストランが一軒あった。バスを待つ人たちの利用が多いのか大層賑わっていた。バスを一台見送り、トイレ利用も兼ねてレストランで休憩することにした。席を探していたら、にこやかに相席の誘いをしてくれる夫妻がいた。しゃれたドレスにサングラスの婦人と口鬚を上品にたくわえた紳士である。バカンスでチューリヒから来ていると言う。とても感じのよいお二人であった。同じく旅を楽しんでいる者同士の親しみというのだろうか、これまでに描いたスケッチを見せたりして、自然に会話がはずむ。こうしたことは外国ならではの事ともいえそうだが、偶然の出逢いによる会話というのも旅の楽しみの一つである。話をしながらの冷えたビール、乾いた喉には格別の美味しさであった。バスの時間がきたので席を立つ。


◆ バスの中にて
 一時間に一本しかないせいか、バスはほぼ満員の盛況になった。一番後ろの座席にレストランでご一緒した夫婦が居た。家内が席を求めて近付いて行くと、子供を膝に乗せて、当然のように家内の為に席を空けてくれた婦人がいた。家内は喜んでその好意を受けた。周囲の乗客が譲り合い、僕の座れるスペースも作ってくれた。僕も、その親切に感謝しながら座席についた。家内は動き出したバスの中でツルを折り、膝に抱かれた幼い娘にプレゼントした。母娘は、ツルの羽を動かしたり、飛んでる様子を見せ合ったりして、とても嬉しそうであった。その様子をみて、周りの乗客も笑顔になった。
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悪ガキ少年たち(最後部の左3人)
 イタズラしたりふざけてばかりいる悪ガキ少年が3人、僕らのそばに居た【写真】。よく言えば天真爛漫な行動であり憎めない小僧たちであった。大人をからかい、少しも静かにはしていない。2列前の席に小柄なおばあさんと孫娘が座っていた。少年たちと同じ年頃のその娘は、一見してダウン症の特徴ある表情をしていた。悪ガキの一人が少女を見つけて仲間に知らせた。一人がわざわざその娘の顔を覗きに出かけ、仲間におどけてみせた。仲間が笑った。孫娘を笑者にされた小柄なおばあさんは立ち上がって怒った。少年たちを睨みつけ、激しい怒りの言葉を並べた。周りの乗客も注目した。悪ガキ達はシラケてしまった。さすがに調子に乗り過ぎてしまったと思い知らされたようだ。少年たちの横に座っていたサングラスのご婦人が、静かに少年たちに語りかけた。言葉は分らないが、優しく諭しているように見えた。代表して一人の少年がおばあさんに謝った。
 何でもない当たり前ともいえるこんな情景が、今の僕にはしみじみと新鮮であり、心ときめく出逢いの風景に思えるのである。


曲がりくねった谷間の細い道を、ポストバスは安心速度で走った。時々響くユニークなクラクションが牧歌的で心地よく、乗客の表情は一様に穏やかであった。ダヴォス駅前でバスを降り、Coopに寄って食料を買い込む。健康的な一日であったと思う。それなりの疲れは感じるものの、何故か、晴れ晴れとした気持ちを嬉しく思いながら、ホテルへの坂道を登った。

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