★ 2001 南イタリアとシチリアの旅
イタリア国旗  ◆ 9日目(4月5日) 【旅の全体地図】 目次へ
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【シチリア島地図】
【本日の旅程】=シラクーサ→ピアッツァ・アルメリーナ→アグリジェント(泊)

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延々と続く麦畑
 8時半、出発。内陸に向って走る。ゲーテ『イタリア紀行』の中の一節に「延々と続く麦畑」とあるそうだが、彼が馬車から眺めたであろう風景は、今も昔と変わらないのではないだろうか【写真右】


◆ カザーレのローマ離宮
 これから訪ねる、ピアッツァ・アルメリーナ<Piazza Armerina>カザーレのローマ離宮<V.Rom di Casale>は、ローマ時代の芸術的遺産としては最も貴重なものの一つと言われている。18世紀に偶然一部が発見され19世紀初頭から発掘が始められたそうだが、本格的には19世紀末からであり、現在もなお続けられていると言うから大変なことである。3500平方メートル以上もある広大な敷地に建てられた離宮、しかも1級の芸術的遺産となれば、作業は慎重になり時間がかかるのは仕方のないことであろう。中庭には池が生き返り【写真】、邸内にはまだまだ調査の済んでいない遺跡が沢山あるようであった【写真】

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中庭の池
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発掘作業中の邸内

◆ 空調完備の建物
 当時(紀元後3〜4世紀)の建築としては、驚嘆に値する諸施設と、贅を尽くしたモザイク装飾には目をみはるものがあった。最初に案内されたのが、ボイラー施設跡であった【写真】。特に中央のかまどには大きな水槽があったらしく、暖められて適温になると鉛の水道管を通じて隣の温水浴槽に送られるようになっていたと言う。また、暖房用にスチームとして送り込むボイラーもあり、温水浴室、微温水浴室、冷水浴室と機能的に繋がった部屋も見ることが出来た。全館暖房完備、トイレは全て水洗式であり、想像以上にレベルの高い生活をしていたことをうかがい知ることが出来た。
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ボイラー施設跡

◆ モザイク画
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 50ほどの部屋や回廊の床はすべて多色モザイクで装飾され、物語や幾何学模様、日常の生活などが具象的に表現されていた。モザイクは、長い年月土に覆われていたお陰で、色彩も褪せることなく保存出来たのは幸いである。現在は温室のような透明な建材で建物全体が保護され、室内には観光客用に足場が作られていた【写真左】

モザイク画のモチーフは、それぞれその部屋の用途に最も相応しいと思われるものが描がれてあった。
 狩りの廊下には捕獲した動物【写真A】や狩りの様子【写真B】が描かれていた。
浴室の控えの間には、館の支配者が子供を浴場に連れて行く場面が描かれていた【写真C】。小間使いの一人は着替え用の清潔な衣服が入っているのであろう篭を持ち、もう一人がマッサージ用の油:香油?の入った箱を下げている。

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A:捕獲した獲物
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B:狩りの様子
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C:浴室の控えの間のモザイク画

 寝室への控えの間には、ホメロスが語るユリシーズの冒険の一場面が描かれてあった【写真D】。主役はユリシーズとその遠征の同士たちと三つ目の巨人のポリュペモスである。ユリシーズが大杯のブドウ酒を巨人に勧め、仲間がもう一つの大杯に酒を注いでいる。酔わせて巨人の目を潰し、羊の腹にしがみついて洞窟から逃げすことに成功する、という話であるが、実に臨場感豊かに表現されていた。当時の美女【写真E】,食卓に供された海の幸【写真F】、ビキニ姿で躍動している少女の部屋【写真H】や愛の交歓シーンのある寝室など【写真G】、おおらかで健康的な日常まで、膨大なモザイク画の中に当時の様子を垣間見ることが出来たように思う。モザイクを製作したのは、アフリカの職人たちだったそうだ。

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D:ホメロスが語るユリシーズの冒険の一場面
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E:当時の美女

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F:海の幸
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G:愛の交歓
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H:ビキニ姿の少女


◆ 赤いオレンジ
 街の小さなレストラン『ペピート<PEPITO>』【写真】で昼食。今日もスパゲッテイだったが、美味しく頂いた。食事の度に赤ワインを楽しんでいるが、今回はオレンジジュースに心ときめく。いわゆるオレンジ色ではなかったからである。赤ワインと同じような血の色をしており【写真】、味は幾分甘味の濃いものであった。デザート【写真】に出されたオレンジの黄色い皮をむいたら、当然赤い果肉であった。この地方の土壌が作り出す独特の果肉なんだそうだ。栄養価も高いと自慢していたが、それはどうだか。
 
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レストラン 『PEPITO』
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赤ワイン(左)とオレンジジュース
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デザートの果物

◆ アグリジェントへ  【シチリア島案内地図】
 アグリジェント<AGRIGENTO>まで凡そ120km、スタートしたのは3時少し過ぎ。バスは高速道路に乗って走ったが、それでも1時間半かかってしまった。太陽は、大分西の空に傾き、アグリジェントの丘には夕刻が迫っていた。丘に上がってみたら、地中海が見えた。海の向こうはアフリカ大陸である。シチリアでアフリカに最も近い街が、此所アグリジェントなのだと言う。しかし、アフリカ大陸を見ることは出来なかった。前3世紀末、この地を征服したローマが、街の名前をアグリゲントゥム「田舎の人々」と名づけたのが始まりで、今でも田舎っぽい素朴さが売りの一つだそうだ。


◆ 神殿の谷
 ギリシャ神殿が建ち並ぶ丘は、市街地よりも下方に在るので「谷」と呼ばれているが、丘は丘。なかなかに展望がよく、古代からあると言う尾根伝いの神殿大通りは、快適な散歩道であった。東の方から西へ向かって歩いた。東端に一部柱の上をつなげる横材が残っているユノ神殿があった【写真】。前5世紀の建設と言われる。そして前6世紀に建てられたという、柱だけが8本並ぶヘラクレス神殿【写真】、これはこの丘で最も古い神殿である。

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ユノ神殿
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ヘラクレス神殿

 中程に建つ重厚なドーリス式のコンコルディア神殿【写真】は、ほぼ完璧なままの姿を残していた。それは途中から、教会堂として転用された為破壊をまぬがれたのだそうだ。西の外れの丘には双児神カストルとボルックスの神殿が建っていた。周辺には、破壊された石柱や石材がゴロゴロと散在しており、そこに唯一夕陽に照らされながら4本の柱で建つその神殿には孤高の気高さが感じられた【写真】。海から緩やかな風が吹いてきた。肌寒さを感じながら仰ぎ見る神殿の肩には、ほぼ満月に近い白い月がかかっていた。

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コンコルディア神殿
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双子神の神殿
【油彩画の完成作品】
【水彩画の完成作品】

◆ 心ときめくシチリア風ディナー
 最近とても評判が高いという、とある郊外のレストランへバスで出かけた。それは、周囲には全く人家の見当らない寂しい草原の中に在った。しかも平家であり、夜の帳に包まれてひっそりと建っていた。駐車場に降り立って、はじめて気がつく程の建物であった。暗い駐車場から入り口に近付くにつれ怪しく魅惑的な照明が胸ときめかせ、一歩店の中に入るといかにもレストランらしい華やかさと活気が漲っていた。見渡すと、ほぼ満席であった。ボーイたちが忙し気に働いていた。評判が高いというのは本当だったのだ。
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ディナーの海鮮料理
 気の合うメンバーでテーブルを囲んだ。オーダーした大ビンのワインが運ばれてきた。今日が誕生日であるという婦人に、旅行社からプレゼントが贈られ、全員で祝福の乾杯をした。何度もフラッシュが光り、ディナーは賑やかに盛り上がった。運ばれてきた海鮮料理【写真】も格別の美味しさであった。
 隣の奥まったテーブルには、白いシャツで白髪の年輩の男性とその息子らしいダンディな青年が並んで座り、向かい合って若く美しい2人の女性が食事をしていた。青年のガールフレンドだろうか、と思ったが少しも楽しそうでなく、はしゃぐ我々のほうに男は時々鋭い視線を送ってきた。非難されているのかな、と少し気まずく思った。しかし、我々を中に挟んで、特別にテーブルを並べた席は、制服姿の大勢の警察官たちで盛り上がっていた。だから、誰もが安心して賑やかな食事を楽しんだ。

 「今夜の料理は最高だったわねぇ!」満足そうな会話を乗せてバスが動き出した時、「今夜の食事は、スリルでしたよ」と添乗員。「気付きませんでしたか?隣のテーブルで食事をしていたのは、マフィアのファミリーだったのですよ。」「実はフラッシュが光る度に、鋭く睨まれましてね、緊張したんですよ。・・・その内警戒心を解いてくれた様子なので安心しましたがね。」「ボーイたちは緊張してピリピリしていたし、警察官たちだって気付いてないはずはない。今のイタリアを象徴しているような場面でしたねぇ!」・・・添乗員の話に半信半疑ながらも皆びっくり。シチリアならではの、エキサイティングなディナーであった。

 日が暮れると、神殿の谷のそれぞれの神殿遺跡がライトアップされた。寄り道をして、夜の神殿近くをしばし散策【写真】。ワインで火照った顔を夜風で冷まし、今夜の宿であるグランドホテル:ディ・テンプリ【写真】に向かった。今日も、盛り沢山の1日であった。

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ライトアップされた神殿を散策
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グランドホテル:ディ・テンプリ→

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