2007アルプスへの旅

◆12日目(8月25日)晴れ

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 8時〜、朝食。
 9時、チェックアウト。ようやくニコレッタと会えた。奇麗な英語を話す穏やかな年配の女性であった。

◆峠の魔女

 9時半、ファルツァレーゴ峠(2105m)着。峠の土産店に、自然木を活かした木彫りの人形やデフォルメされた顔が多数(写真下)。屋外に並べられた商品の横には、箒を逆さに持った魔女が恐ろしい表情で見守っていた。イタリアらしい郷土性を強調した小さな人形も多数展示販売していたが、ほとんどがMade in China。吃驚するやら呆れるやら。


魔女

 

 


 


ファルツァレーゴ峠の礼拝堂

ファルツァレーゴ峠からの眺め

ファルツァレーゴ峠

キリストと老女

デフォルメされた顔

◆ポルドイ峠


Arabbaあたりで正面にセッラ山塊

 11時40分頃。正面にセッラ山群が見えてきた。これもドロミテを代表する巨大な山塊である(写真上)。ポルドイ峠も間もなくである。路肩に停車してカメラに収めた。


ポルドイ峠のHotel Savoia

ポルドイ峠に咲いていた花(カルリナ・アカウリス)

 12時、ポルドイ峠に無事到着(写真上、左)。峠は、沢山の車で賑わっていた。少し外れた地点に車を停めて、雄大に聳えるサッソルンゴを描かせてもらった。

 

◆恐ろしい眺め

 13時過ぎ。ともあれチェックインを済ませておく。フロントのおじさんに、マルモラーダの見える場所を聞いたら、ロープウエイでポルドイ山山頂から。もう一つは、裏手の山を尾根筋まで登ってみることだと言う。先ずは、ロープウエイで展望台に上った。そこにはデッキチェアが用意され、沢山の人たちが肌もあらわに日光浴をしていた。少しでも太陽に近づいて強い日光を浴びれば、受ける恩恵も多いと信じているのだろう。「黒く日焼けした体は健康の証拠」と考えられていたのは一昔前の話である。「甲羅干しは皮膚ガン発症の実験をしているようなもの」と聞いたこともある。太陽に近ければそれだけ紫外線量も多くなる。紫外線は皮膚癌を誘発するというのが今日の常識と思っている僕にしてみれば、恐ろしい眺めであった。でも、皆さんは幸せそうな表情なんだし、僕の心配なんて大きなお世話であろう。日陰には雪が残っており、流れる空気は冷たく爽やかであった。

◆360度の素晴らしい展望

 山頂(2950m)からの展望は、360度すばらしい眺めであった(写真下)。地平線の彼方まで、見渡す限りドロミテ山塊の大海原である。目線の高さにサッソルンゴ、頂上が円錐形のPiz Boe(3152m)、その巨大な山塊が垂直に切れ込んだ断崖のその右奥にはTofana di Rozes (3225m)、Sorapis (3205m)が並んで遠望出来た。

サッソルンゴ
<↓画像をクリックすると別ウィンドウでパノラマ画像が開きます>

展望台(2800m)からのパノラマ(1)

展望台(2800m)からのパノラマ(2)

展望台にいた鳥

 更に視線を右に転ずるとドロミテ最高峰のマルモラーダ(3343m)(写真下)。貫禄を誇示するが如く、頂きの万年雪が白く輝いていた。確かに、魅力溢れる山姿である。しかし、その威容を表現するには、此処では目線がいささか高過ぎると思う。

マルモラーダ

◆サッソ・ルンゴとマルモラーダ


裏山の尾根を目指して登る

 おじさんが教えてくれた、もう一つのポイントである裏山の尾根へ行くルートを眺めてみた。さほど険しい登りではなさそうである。まだ充分陽は高い。行ってみることにした。

 3時40分。一旦ホテルに帰り、スケッチ用具だけを担いで出発した。おじさんは、1時間位で行けると言ったが、既に時刻は4時。のんびり出来る余裕はなさそうである。はやる気持を抑え乍ら、ゆっくり登る(写真右)。しかし、血流の悪い左足が10分も歩くと酸欠状態になり悲鳴をあげる。やむなく息継ぎをして回復を待つ。それでもほぼ1時間足らずで尾根に立つことが出来た。

 最初に、眼に飛び込んできたのは、サッソルンゴ(写真下)。逆光の西日に霞んでいたが、優しい山容に心を打たれる。予期していない出会いであったこともあり、そのインパクトは強いものであった。

サッソルンゴ

 この場所からは、マルモラーダの姿は見えない。更に、もう一段高い尾根に向って急いだ。緩やかな坂道なのに、息が切れた。10分の頑張りで展望が開けた。一歩進む毎に、荒あらしい岩肌のマルモラーダが眼前にせり上がって見えてきた(写真下)。西日を受けて、深い陰影を刻むその姿は力感に溢れていた。

マルモラーダ

 峠を少し下った所に展望台を兼ねた山小屋があったので、そこで一息いれた。コーヒーをオーダーしてテーブルを借りようかな、と思ったのだが、落ち着ける場所ではなかった。風の当らない斜面に腰を据え、顔に当る西日をタオルで防ぎ乍ら、マルモラーダを描かせてもらった。

マルモラーダ

 6時、いろいろな方向に繋がる峠の登山道を、三々五々人々が下って行く。僕らも引き上げることにした。下り道の正面に見えるサッソルンゴは、一段と軟らかい逆光の中に沈みつつあった。尾根を越えて行く風が足元の草花を揺らし、色褪せ始めた山肌を撫でて行く。秋の気配を感じながら、ゆっくり下山した。登りには悲鳴をあげた左足だったが休息する必要もなく、40分でホテルに帰りついた。

◆TPO

 7時半〜、ディナー。部屋を出たところで、同じ階に泊っている日本人の母娘とばったり。思いがけない出会いにびっくりしたが、あまりにも場違いなきらびやかな服装と気取った言葉使いに一歩腰を引いてしまう。濃い化粧と光る装身具で飾り立て、まるで一流ホテルでの晩餐会に招待された貴婦人気取り。しかも気品のかけらも感じられないファッションだから救われない。ここは山岳ホテル、上質ではあるが山小屋なんですよ。あまり気取られるとはた迷惑なんですがねぇ・・・質素な食堂で隣り会わせになったが、同じ日本人として何となく気恥ずかしい思いをしてしまった。

ライン


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