★ 2000 のんびり・スイスの旅
 ◆ 10日目(7月20日) 快晴 【全体地図】 目次へ
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【本日の旅程】=ソーリオ→マローヤ(泊)、セガンチーニアトリエ、歴史の道訪問

写真をクリックすると拡大画像が見られます  今日も清清しい朝を迎えた。朝の空気を胸一杯に吸い込む。
朝食を済ませて庭にでると、絵を描くグループとも顔を合わせた。肩を組み円陣を作り、何やら楽しそうである。その中に、昨夜のアーティストもいて、目ざとく僕らを見つけると、手を挙げて駆け寄ってきた。朝の挨拶を交わし、「何をしていたんだ?」と聞くと、「今日もいい天気だ、いい絵を描こう!って、気合いを入れていたんだよ」と晴れやかに笑う。今日という日を精一杯楽しもうとしている彼等。僕も負けてはおられない、と思う。「お会い出来てほんとに良かった」と伝え、記念にツーショット。
 「荷物は、バスが発車するまでには停留所に運んでおいてあげよう。」と言うオーナーの親切に甘えて、ホテルは早めにチェックアウト。ソーリオ村をのんびり散策して、名残りを惜しむことにした。


写真をクリックすると拡大画像が見られます ◆ 毎朝の行事
 窓辺の花に水を差して歩くおばさんの姿があった。共同の水洗い場に咲く花にも赤いジョウロで水を差す。これが毎日の朝の行事なのに違いない。出しっ放しの蛇口から迸る水は常に水槽を満たしており、溢れる水面は 朝日を受けて一段と清らかに輝いていた。 今日も平和で穏やかな1日になることだろう。


◆ 二人の老女 写真をクリックすると拡大画像が見られます
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 バス停前のベンチに村の老女が二人、なにやら真剣に話しあっていた【写真左】。その様子から心配事の話に違いないと思った。

 やがて一人は教会の墓地に向い、赤いジョウロに水を満たすと、ご先祖の眠る花壇に水をやっていた【写真右】。どの墓も綺麗に手入れが行き届いており、家族の絆の強さが偲ばれる。しかも、ここからの眺めは、ほんとうに素晴らしい。しみじみと此処に眠る人たちの安らかさを思う。

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 もう一人は、村に2軒しかない小さな小さなスーパーに入って行った。此所ならではと思う栗を使ったパンが売られていた。小さい乍ら、コンビニも顔負けの品揃えである。

 やがて、二人は再びベンチで顔合わせ、しばし話し合った【写真右】。杖を持つ元気のない老女に対して、腰の折れ曲がった老女は真剣な表情で話しかけていた。老女は杖を持ち直すと、ゆっくり家路に向って消えた。
 話の内容は分からないが、心を開いて語り合える友がいるこの村の日常。都会に毒された我らの日常は、大勢の人の中で孤立していると思う。しかし、この村の人々に孤独の陰は見当たらない。なんと、素晴らしいことだろう。一番大切にしたい、人としての生き方を、しっかり目の前に見る思いがした。(ベンチに見えるのは僕のザックです。)


◆ ハーブを売る店
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 バス停の前に、郷土の特産品とハーブを売る店がある。青く大きな眼をした大変魅力的な中年女性が店長である。特産品やハーブの事に詳しいのは当然のこととして、彼女はカメラマンでもあり、日本の華道「草月流」も修行したことがある、
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いわばアーティストである。ちなみに店内の壁に貼ってある大きなカラー写真は彼女の作品であり、1昨年見せてもらった秋の風景も素晴らしいものであったが、今年の作品もなかなかの出来栄であった。嬉しいことに、彼女は僕のことを覚えていてくれ、2年ぶりの再会に又話がはずんだ。「2年毎にやって来るの?」と聞くので、「出来たらそうしたい」と答える。今回もまた、彼女の薦めるハーブティを買い求め、お店の前で、ツーショット。バスが動きだすと、彼女は手を振って見送ってくれた。

◆ ホテル・マローヤ・クルム<HOTEL MALOJA KULM>
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ホテル・マローヤ・クルム
 11時、懐かしのホテル・マローヤ・クルムに到着。マローヤ峠展望台のすぐ前に建つ、歴史と格式のある立派なホテルである。ちなみに、スリースター。白いヒゲのオーナーは満面に笑みをたたえ、にこやかに出迎えてくれた。お土産に用意してきた僕の絵はがき10枚をプレゼント。1枚1枚丁寧に見てくれた。そんな彼の誠実な人柄に改めて親しみを感じてしまう。「彼なら何でも安心して話をすることが出来る」と家内はぞっこんの惚れ込みようである。
 増築工事中であることは承知していたが、出来上がったばかりの部屋に案内してくれた。展望はぐるりと180度、広いベランダを使って絵を描けば良いと言う。まだカーテンが付いていないが、すぐに付けさせるから、よかったら使っていいという。難点は、新しいが故の独特の臭いがきついことだが、嬉しいのはベットからトイレ浴室、総べてが新品で僕らが最初に使えるということだ。好意に感謝し甘えることにした。


◆ 城の展望台

 セガンチーニのアトリエの横から「歴史の小道」と称する道を行くと、小高い丘の上に建つ見張りの塔に行き着いた。この塔は未完成に終わった城の遺物だが、塔の内部にはセガンチーニに関する資料や地元作家の作品が展示されてあった。頂上まで登り360度のパノラマビューを楽しんだ。「歴史の小道」は、丘を一周する形で整備されており、氷河の侵食で出来た深い穴や、地層の変遷などを解説した展示板もあって、興味深く散策出来た。道草を食い乍ら、一周凡そ一時間。快適な散歩道であった。
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◆ セガンチーニのアトリエ

セガンチーニの胸像

整理棚と写生用バック、山靴
 山に住み、山を描き、山で死んだセガンチーニ(1858〜1899)は、僕の尊敬する偉大な画家の一人である。一度、彼のアトリエを覗いてみたいと思っていたが、今回ようやく希望を叶えることが出来た。作品の展示はないが、彼が使っていたパレットとか絵の具を入れる整理棚や写生用バックなどが展示されていた。山野を歩き回り、くたびれてしまった彼の山靴が棚に乗せて在り、生前の彼の姿がリアルに偲ばれた。現場主義を貫き、200号のキャンバスでも現場に運び制作している様子が写真に残されていた。凄い人だと思う。その信念と姿勢には心から敬服してしまう。 
 円筒形に近い16角形の小さなアトリエでは、彼に関する書籍の閲覧とその販売が行われていた。英語版の画集は出版されておらず、残念であった。色刷りが優れた最新の画集を一冊だけ購入した。 写真をクリックすると拡大画像が見られます
16角形のアトリエ外観→

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